日本銀行金沢支店が2025年夏に公表した石川県金融経済クォータリーについて、能登半島地震からの復旧復興需要と県内経済の回復状況を総合的に分析したものです。
主要なポイント
1. 景気の総合判断と復興需要の影響
- 石川県の景気は「一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」との基調判断
- 能登半島地震からの復旧復興需要が公共投資と住宅投資を大幅に押し上げ
- 個人消費は物価上昇の影響を受けつつも持ち直し、設備投資も緩やかな増加基調
- 生産は弱めの動き、業種により回復度合いに明確な差が存在
2. 復興関連投資の大幅増加
- 公共工事請負金額は前年比126.1%増(4月)、56.3%増(5月)と大幅増加
- 復旧復興関連工事が本格化、インフラ復旧・防災強化工事が活発
- 住宅投資も復旧需要により持ち直し、新設住宅着工戸数は前年比11.7%増(4月)
- 建設業界は人手不足と資材価格高騰の中、復興需要への対応に注力
- 県外からの建設業者・労働者の流入により地域経済への波及効果も
3. 個人消費の持ち直しとインバウンド効果
- 百貨店・スーパー売上高は前年比2.4%増(4月)、物価上昇影響あるも底堅い
- インバウンド需要の高まりと新規出店効果が売上を下支え
- 乗用車販売は前年比15.1%増(4月)、8.4%増(5月)と持ち直しつつある
- 家電販売は横ばい圏内、買い替え需要一巡と高額商品への慎重姿勢
- 観光は堅調な動きが一服、震災影響の残存と北陸新幹線効果の一巡
4. 生産活動の業種間格差
- 化学工業は緩やかに増加、医薬品・化粧品関連が堅調
- 繊維工業は持ち直し、高付加価値製品へのシフトが奏功
- 汎用・生産用・業務用機械は下げ止まりつつある、受注底打ちの兆し
- 電気機械は弱めの動き、半導体関連の在庫調整が継続
- 伝統工芸品産業は震災影響から徐々に回復、観光需要との連動性高い
5. 雇用・所得・物価環境
- 雇用環境は緩やかに改善、有効求人倍率1.66倍(4月)と高水準維持
- 雇用者所得は前年を上回る、復興需要による建設業賃金上昇が寄与
- 消費者物価(金沢市、生鮮食品除く)は前年比3.9%上昇(4月)、3.8%上昇(5月)
- エネルギー・食料品価格の上昇に加え、サービス価格も上昇基調
- 企業の価格転嫁は進展するも、観光関連業種では価格設定に苦慮
6. 金融環境と企業動向
- 預金は法人・個人・公金いずれも前年を上回る、復興関連資金の流入も
- 貸出金も前年を上回る、復興資金需要と設備投資資金需要が牽引
- 企業倒産件数は前年並みも負債総額は増加、中堅企業の倒産が影響
- 地域金融機関は復興支援融資に積極的、経営改善支援も強化
- 今後は復興需要の持続性と通常需要への円滑な移行が課題
記事は、石川県経済が能登半島地震からの復興需要により特異な回復パターンを示しており、復興需要の一巡後も持続的な成長軌道に乗せるための産業構造の強化が重要であると指摘しています。