日本政府観光局(JNTO)が2025年7月28日に公表したフランス市場調査レポートで、フランスの若年層における日本文化への関心と訪日観光への影響について詳細な分析を行った重要な市場調査です。本調査は、フランスにおける日本アニメ・マンガ文化の浸透が訪日観光需要に与える影響を実証的に検証し、今後のフランス市場でのインバウンド誘客戦略の基礎資料として作成されています。
調査概要について、2024年10-12月にフランス在住の18-35歳の若年層2,000人を対象としたオンライン調査を実施し、1,894人から有効回答を得ました(回収率94.7%)。調査対象地域はパリ首都圏(40%)、リヨン・マルセイユ等の主要都市圏(35%)、その他の地方都市(25%)で、フランス全土の若年層の意識を包括的に把握しています。
日本アニメ・マンガへの関心について、調査対象者の78.6%が「日本のアニメやマンガに興味がある」と回答し、そのうち52.3%が「とても興味がある」と強い関心を示しています。具体的な作品では、「鬼滅の刃」(65.4%)、「進撃の巨人」(58.7%)、「ワンピース」(54.2%)、「呪術廻戦」(47.8%)、「僕のヒーローアカデミア」(43.1%)が上位を占めており、近年の人気作品が幅広く認知されています。
アニメ・マンガ接触経路については、Netflix等のストリーミングサービスが最も多く81.2%、次いでYouTube(67.8%)、専門書店・古本屋(45.3%)、友人・知人からの紹介(41.7%)となっています。デジタル配信の普及により、フランスの若年層が日本のコンテンツに接触する機会が飛躍的に拡大していることが確認されています。
日本への関心の変化について、「アニメ・マンガを通じて日本により興味を持つようになった」と回答した住民は89.4%に達し、具体的には「日本の文化・伝統」(72.1%)、「日本の食文化」(68.9%)、「日本の観光地・風景」(61.3%)、「日本の現代文化・ファッション」(54.7%)への関心が高まっています。
訪日意向については、調査対象者の67.2%が「日本を訪れたい」と回答し、そのうち34.8%が「とても訪れたい」と強い意向を示しています。アニメ・マンガへの関心度別では、「とても興味がある」層の85.1%が訪日を希望する一方、「興味がない」層では28.7%に留まり、アニメ・マンガへの関心が訪日意向に大きく影響していることが明らかになっています。
訪日時に体験したい活動について、「アニメ・マンガ関連スポット訪問」が78.4%と最も多く、具体的には秋葉原(68.9%)、原宿(54.2%)、池袋(41.7%)、中野(32.8%)などが人気となっています。また、「アニメの舞台となった場所の訪問」も62.3%と高く、アニメツーリズムへの強い関心が確認されています。
日本文化体験への関心では、「日本料理体験」(84.1%)、「伝統文化体験(茶道、書道等)」(67.8%)、「温泉体験」(58.9%)、「祭り・イベント参加」(52.4%)が上位を占めており、アニメ・マンガをきっかけとした幅広い日本文化への関心拡大が見られます。
訪日阻害要因については、「費用が高い」が61.4%と最も多く、次いで「言語の壁」(47.8%)、「距離が遠い」(41.2%)、「情報不足」(28.9%)となっています。これらの課題への対応が、フランス市場からの訪日観光促進の鍵となることが示されています。
旅行形態の希望では、「個人旅行」を希望する層が72.6%と大多数を占め、「友人・家族との旅行」が85.3%、「一人旅」が31.7%となっています。滞在期間は「7-14日間」が最も多く48.2%、次いで「4-7日間」が32.8%となっており、比較的長期の滞在を希望する傾向が見られます。
情報収集手段については、Instagram(76.8%)、YouTube(71.4%)、TikTok(58.7%)などのSNSが上位を占め、従来の旅行ガイドブック(34.2%)や旅行会社(28.9%)を大幅に上回っています。若年層向けのデジタルマーケティング戦略の重要性が明確に示されています。
政策的示唆として、フランス市場における訪日観光促進には、アニメ・マンガを活用したコンテンツツーリズムの推進、SNSを中心としたデジタルマーケティングの強化、個人旅行者向けの情報提供充実、多言語対応の改善などが重要な施策として提言されています。特に、アニメ聖地巡礼ルートの開発や、フランス語での情報発信強化が効果的なマーケティング手法として期待されています。