財務省北海道財務局旭川財務事務所が令和7年8月に発行した道北経済レポートについて、道北地域(上川、留萌、宗谷)の経済動向を包括的に分析したものです。
総括判断と先行き見通し 道北地域の経済は「持ち直している」との判断が示されました。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあって持ち直していくことが期待される一方、物価上昇の継続、米国の通商政策、金融資本市場の変動等の影響に注意する必要があるとの見解が示されています。
個人消費の回復状況 個人消費は物価高の影響がみられるなか、緩やかに持ち直しています。主要小売店売上高は物価高の影響はみられるものの、総菜や冷凍食品をはじめとした飲食料品が堅調に推移していることから全体では前年を上回っています。乗用車販売では軽自動車が前年を上回っているものの、一部メーカーの法規制対応を受けた複数車種の受注停止等により普通車・小型車が前年を下回り、全体では前年を下回る結果となっています。
観光業の顕著な回復 観光分野では明確な回復傾向が確認され、旭川空港乗降客数と旭川市内の主要ホテル宿泊客数がインバウンドの増加などから前年を上回っています。この回復は地域経済にとって重要な支援要因となっています。
雇用情勢の改善傾向 雇用情勢は持ち直しつつあり、有効求人倍率(常用)は有効求人数(常用)の減少により前年を下回っているものの、改善傾向が継続しています。新規求人数(常用)では「医療・福祉」「サービス業」等で増加している一方、「製造業」「卸売業・小売業」等で減少しており、前年を下回っています。
産業別動向の詳細分析 公共事業は第1四半期において上川、留萌、宗谷地域いずれも前年を上回っています。生乳生産は乳用牛飼養戸数減少等の影響により留萌・宗谷地域で前年を下回り、全体では前年を下回りました。漁業では水揚金額がタコ・ホッケの減少をホタテ・毛ガニ・スケトウダラの増加で相殺し前年を上回っていますが、水揚量は前年を下回っています。
金融情勢と企業動向 企業倒産は件数・負債総額ともに前年を下回り、企業経営環境の改善が示されています。金融機関の貸出金残高は個人向けが増加したものの、事業者向け・地公体向けが減少したことで前年を下回り、預金残高も流動性・定期性とも前年を下回っています。一方、貸出約定平均金利は前年を上回って推移しています。
記事は、道北地域経済が観光業を牽引役として持ち直しているが、住宅建設の弱含みや金融面での調整など一部に課題も残されており、今後の政策効果と外部環境の変化を注視する必要があると総括しています。