北陸財務局は2025年7月29日、管内4県（新潟県、富山県、石川県、福井県）の経済情勢報告を公表し、「管内経済は、緩やかに持ち直している」との総括判断を示しました。この判断は前月から継続しており、地域経済の改善基調が維持されていることを示しています。
個人消費については「持ち直しの動きがみられる」状況で、小売売上高の改善や消費者マインドの回復が確認されています。特に、観光関連消費の回復が顕著で、北陸新幹線の開業効果により金沢・富山への観光客数が増加し、宿泊・飲食サービス業の売上が向上しています。また、地域特産品の販売も好調で、越前ガニ、のどぐろ、日本酒などの食品関連消費が堅調に推移しています。
生産活動は「持ち直している」と評価され、製造業を中心とした改善が継続しています。北陸地域の基幹産業である化学工業、金属製品製造業、繊維工業において生産水準の回復が見られます。特に、医薬品製造業では新薬開発や海外展開の拡大により堅調な成長を維持しており、富山県の「薬都」としての地位を強化しています。また、精密機械工業では工作機械や産業用ロボットの需要回復により生産が増加しています。
雇用情勢は「改善している」状況で、有効求人倍率の上昇と完全失業率の低下が継続しています。製造業、建設業、サービス業での人手不足感が強まっており、特に技術者や熟練工への需要が高まっています。賃金水準も徐々に上昇しており、労働市場の逼迫度が高まっています。
設備投資については「持ち直しの動きがみられる」状況で、製造業を中心とした投資意欲の改善が確認されています。特に、省エネ・環境対応投資、デジタル化投資、生産能力増強投資が増加傾向にあります。また、北陸新幹線敦賀延伸（2024年3月開業）の効果により、観光・サービス業での設備投資も活発化しています。
住宅建設は「弱含んでいる」状況が続いており、建築資材価格の上昇や労働力不足の影響により新規着工が抑制されています。ただし、新幹線沿線地域では宅地需要の増加により一定の活況も見られます。
公共投資については、北陸新幹線関連工事の完了により大型案件は減少していますが、防災・減災対策やインフラ老朽化対応に関する投資は継続されています。
北陸地域の特徴として、伝統産業と先端産業が共存する産業構造を有しており、越前和紙、輪島塗、高岡銅器などの伝統工芸品から、精密機械、化学製品まで多様な製品を生産しています。また、豊富な水資源と安価な電力を活用した素材産業の集積も特色の一つです。
今後の見通しについては、北陸新幹線敦賀延伸効果の継続、観光業の本格回復、製造業の競争力強化などが成長要因として期待される一方、人口減少・高齢化の進展、自然災害への対応などが課題として認識されています。