外務省が2025年8月8日付けで発表したODA(政府開発援助)関連の公式政策文書で、技術協力と人的資源開発を中心とした日本独自の援助手法と国際協力の実践について詳述したものです。
日本の技術協力は「人づくり」を核心とする独自のアプローチを採用しており、2024年度の技術協力予算約1,850億円のうち、人材育成関連が約60%を占める1,100億円を投入しています。専門家派遣事業では年間約3,200人の技術専門家を約120カ国に派遣し、現地での技術移転と能力構築を実施しています。研修員受入事業では年間約1万2,000人の途上国関係者を日本に招聘し、産業技術、行政管理、社会インフラ整備等の分野で実務研修を提供しています。
分野別技術協力の展開
農業・農村開発分野では、日本の農業技術と営農指導システムを活用し、約40カ国で稲作技術普及プロジェクトを展開しています。アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)イニシアティブでは、2024年までに対象23カ国でコメ生産量を累計2,800万トン増産し、約1,400万人の農家所得向上を実現しました。また水資源管理分野では、統合水資源管理の技術移転により、約30カ国で給水普及率の改善(平均15%向上)と上下水道システムの効率化を支援しています。
産業開発協力では、カイゼン手法や品質管理技術の移転を通じて製造業の生産性向上を支援し、エチオピア、ケニア、ベトナムなど15カ国で年間約500社の中小企業能力強化を実現しています。職業技術教育分野では、日本の産学連携モデルを活用した技術者育成システムを約25カ国に導入し、年間約8万人の技能者養成に貢献しています。特にASEAN諸国では、自動車・電子機器産業の技術者育成プログラムを展開し、日系企業の現地展開を技術面から支援しています。
多様な援助形態の連携
資金協力においては、有償資金協力(円借款)約2,400億円、無償資金協力約650億円を通じて、社会インフラ整備と経済基盤強化を支援しています。円借款では、交通インフラ(約40%)、電力・エネルギー(約25%)、上下水道(約20%)が主要分野となっており、借入国の返済能力を考慮した持続可能な融資条件を設定しています。また国際機関を通じた多国間協力では、世界銀行、アジア開発銀行等への拠出を通じて、広域的な開発課題への対応と援助協調を推進しています。
記事は、日本のODA政策が技術移転と人材育成を重視する独自性と、多様な援助手法の戦略的組み合わせにより、途上国の自立的発展に向けた持続的な協力関係を構築していると結論づけています。