ジェトロ・ヒューストン事務所が2025年4月に作成した「サウジアラビアの地域統括会社（RHQ）誘致政策」について、政策の成果と今後の展望を分析したものです。
サウジアラビア政府の地域統括会社誘致政策は顕著な成果を上げており、2025年7月時点でライセンス発給数が642件に達し、当初設定した2030年目標の500件を5年前倒しで上回りました。この成功を受けて政府は新たな目標設定を行い、ライセンス発給数を1,000件に引き上げ、フルタイム雇用創出を当初の7,500人から36,000人へと4.8倍に拡大する計画を発表しました。また、フォーチュン・グローバル500企業の40-50%をサウジアラビアに誘致する野心的な目標も掲げています。
政府が提供する主要なインセンティブパッケージは4つの柱で構成されています。まず政府調達への参加権付与により、100万リヤル（約3,600万円）を超える案件において、RHQを持たない外国企業の入札を原則として制限する政策を導入しました。次にサウダイゼーション（現地人雇用義務）の10年間免除措置により、外国企業の人材確保負担を軽減しています。さらに法人税の30年間免除という長期的な税制優遇に加えて、駐在員とその家族に対するプレミアム居住ビザの供与により、外国人材の長期滞在を支援しています。
日本企業の参加状況も活発で、2025年7月時点で18社がRHQライセンスを取得しており、業種は製造業、金融、情報技術等多岐にわたります。具体的には横河電機、トレンドマイクロ、シスメックスなどの主要企業が含まれ、中東地域における事業展開の拠点として活用しています。政府はこれらのRHQが単なる管理拠点ではなく、中東地域全体のバリューチェーン拡充を支援する戦略的機能を担うことを期待しており、今後は国際機関やメディア企業の誘致にも力を入れる方針を示しています。
記事は、サウジアラビアのRHQ誘致政策が目標を大幅に上回る成果を達成し、外国企業の中東戦略における重要な選択肢として確立されたと結論づけています。