ジェトロ・ヒューストン事務所が2025年4月に作成した「アーカンソー州 ビジネスの魅力ガイド」で、同州の農業・製造業・小売業を基盤とした投資環境と日本企業進出機会について分析したものです。
アーカンソー州は人口304万人、州内総生産(GSP)約1,350億ドル(2023年)を誇る米国南部の戦略的拠点で、地理的に米国の中心部に位置することから「アメリカの心臓地帯」と呼ばれています。州内にはウォルマート(世界売上高1位の小売業)、タイソンフーズ(全米1位の食肉加工業)など世界的企業の本社が所在し、これらを中心とした産業クラスターが形成されています。
主要産業の競争優位性
農業分野では米生産量が全米第1位(年間約120億ポンド)、鶏肉生産量が第2位(年間約60億ポンド)、綿花生産量が第4位の実績を誇り、農産物輸出額は年間約35億ドルに達します。製造業では、ダッソー航空、ゼネラル・エレクトリック、日立などの航空宇宙関連企業が集積し、年間生産額は約45億ドルを記録しています。小売・物流業では、ウォルマートの本社効果により物流技術とサプライチェーン管理の先進地域として発展し、関連企業約1,200社が州内に拠点を設置しています。
事業コストの競争力
アーカンソー州の事業運営コストは全米平均より約12%低く、特に製造業の平均年間労働コストは4万1,500ドルと全米平均を大幅に下回ります。工業用電力料金は1キロワット時あたり6.8セント(全米平均の約75%)と安価で、エネルギー集約型産業にとって大きなメリットがあります。土地コストも1エーカー当たり約3,500ドルと周辺州と比較して競争力が高く、初期投資負担の軽減につながります。
投資インセンティブと人材育成
州政府は積極的な投資誘致策を展開しており、InvestArk税額控除プログラムにより製造業投資に対して投資額の最大5%、雇用創出に対して新規雇用1人当たり最大4,000ドルの税額控除を提供しています。また研究開発活動には支出額の20%の税額控除を適用し、イノベーション促進を支援しています。アーカンソー大学システム(11校)とコミュニティカレッジ(22校)が産業界と密接に連携し、製造技術、物流管理、農業技術の専門人材育成プログラムを展開しています。特にウォルマートと大学が共同で運営するサプライチェーン管理学部は全米屈指の実績を誇ります。
記事は、アーカンソー州が低コスト操業環境、優れた物流立地、充実した人材育成体制により、日本企業の米国中南部進出における戦略的拠点として高いポテンシャルを持つと結論づけています。