ジェトロ・ヒューストン事務所が2025年4月に作成した「ミシシッピ州 ビジネスの魅力ガイド」で、同州の投資環境と日本企業進出の機会について詳細に分析したものです。
ミシシッピ州は人口294万人、州内総生産(GSP)約1,200億ドル(2023年)の規模を持つ米国南部の戦略的拠点で、メキシコ湾に面した428マイルの海岸線とミシシッピ川という2つの重要な物流動脈を有しています。地理的優位性として、全米人口の約60%が半径500マイル以内に居住する市場アクセスの良さと、メキシコ湾岸工業地帯の一翼を担う産業立地を活用できます。
主要産業と競争力
製造業では自動車産業が州経済の中核を占め、日産自動車のキャントン工場をはじめとする完成車メーカーと部品サプライヤーが集積しています。年間自動車生産台数は約35万台で、雇用創出効果は直接・間接合わせて8万人以上に達します。航空宇宙産業では、ロールスロイス、エアバス、ボーイングなどの主要企業が製造拠点を設置し、年間生産額は約40億ドルに上ります。農業分野では綿花生産量が全米第3位、なまず養殖が全米第1位の実績を誇り、食品加工業の発達を支えています。
投資インセンティブと事業コスト
ミシシッピ州は全米で最も積極的な投資誘致政策を展開しており、製造業企業に対して設備投資額の最大100%を10年間にわたって固定資産税から控除するMajor Economic Impact Act(MEIA)を提供しています。さらに新規雇用1人当たり最大2,500ドルの雇用創出税額控除、研究開発活動に対する税額控除率25%など、包括的な優遇制度を整備しています。操業コストは全米平均より約15%低く、特に労働コストは製造業で年間平均4万2,000ドルと競争力の高い水準を維持しています。
インフラと人材育成
交通インフラでは、ガルフポート港とパスカグーラ港という2つの国際貿易港を擁し、年間貨物取扱量は合計約3,000万トンに達します。州内には6つの商業空港と広範囲な鉄道網(総延長2,500マイル)が整備され、効率的な物流システムを構築しています。教育面では、ミシシッピ州立大学やミシシッピ大学など8つの4年制大学と15のコミュニティカレッジが産業界と連携した人材育成プログラムを展開し、特に製造業技術者の育成に力を入れています。
記事は、ミシシッピ州が低い事業コスト、充実した投資インセンティブ、戦略的立地条件により、日本企業の米国南部進出における有力な選択肢であると結論づけています。