外務省が2025年8月8日付けで発表したODA(政府開発援助)関連の公式政策文書で、人道支援と平和構築における日本の戦略的取り組みと国際社会での責任履行について包括的に解説したものです。
日本の人道支援は緊急人道支援と中長期的な復興支援を一体化したアプローチを特徴とし、2024年度の人道支援予算は約800億円に達しています。このうち国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への拠出が約200億円、国連世界食糧計画(WFP)への支援が約180億円、国連人道問題調整事務所(OCHA)を通じた多国間人道支援が約150億円となっており、日本は世界第3位の人道支援ドナー国としての地位を確立しています。
地域別人道支援の展開
中東・アフリカ地域では、シリア難民支援として2024年までの累計支援額が約1,200億円に達し、レバノン、ヨルダン、トルコにおいて約350万人の難民・避難民への食料、医療、教育支援を継続しています。アフガニスタンにおいては、人道状況の悪化を受けて年間約120億円の緊急支援を実施し、約800万人への基礎的サービス提供を支援しています。アフリカ地域では、サヘル地域の人道危機に対して年間約180億円を投入し、マリ、ブルキナファソ、ニジェールにおける約600万人の国内避難民支援を展開しています。
災害リスク軽減と防災協力では、仙台防災枠組2015-2030の実施推進により、年間約200億円を投入して約60カ国での早期警戒システム構築と災害対応能力強化を支援しています。気候変動に起因する自然災害の増加に対応するため、太平洋島嶼国14カ国に対して海面上昇適応策として年間約40億円の支援を提供し、防潮堤建設や住民移転支援を実施しています。
平和構築と紛争予防
平和構築分野では、国連平和構築基金(PBF)への拠出約50億円を含む年間約300億円の投入により、紛争後復興と持続的平和の定着を支援しています。アフリカ地域では、南スーダン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国での平和構築プロセスに参加し、元兵士の社会復帰支援(約8万人対象)、コミュニティレベルでの和解促進、基礎インフラ復旧を一体的に推進しています。また東南アジアでは、ミンダナオ和平プロセス支援として累計約200億円を投入し、バンサモロ自治政府の行政能力構築と元反政府勢力メンバーの社会復帰を支援しています。
女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの推進においては、年間約80億円を投入して紛争下での女性保護と平和構築プロセスへの女性参画拡大を支援しています。具体的には約40カ国で女性リーダー育成プログラムを実施し、年間約3,000人の女性平和構築人材の能力強化を図っています。
記事は、日本の人道支援・平和構築政策が予防から復興まで包括的な取り組みを通じて国際平和と安全の維持に積極的に貢献し、人間の安全保障理念に基づく独自性のある国際協力を展開していると結論づけています。