日本銀行の最新発表によると、内田眞一副総裁は2025年7月23日の高知県金融経済懇談会において、日本経済の現状と金融政策運営について包括的な見解を示した。内田副総裁は、日本経済は一部に弱めの動きが見られるものの緩やかに回復していると評価した。ただし、米国の関税政策など各国の通商政策の影響により、先行きの成長ペースは一旦鈍化すると予想している。
短観の結果によれば、企業の業況感は製造業の一部で悪化しているが、全体としては良好な水準を維持している。2025年度の企業収益は製造業で8.4％の減益が予想されるものの、非製造業では増益見通しとなっており、企業部門全体では高水準の収益が維持される見込みである。春季労使交渉では賃上げ率が5.25％と34年ぶりの高水準を記録し、特に中小企業での賃上げが顕著であった。
物価情勢については、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は直近6月で3％台前半となっている。食料品価格、特に米価格の上昇が主因となっているが、政府の対応もあり、今後は減衰していくと見込まれる。基調的な物価上昇率は、経済成長の鈍化により一旦伸び悩むものの、2026年度後半から2027年度にかけてのどこかの時点で2％の物価安定目標を実現する姿を展望している。
金融政策運営については、現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえ、経済・物価情勢の改善に応じて政策金利を引き上げていく方針を維持している。また、長期国債買入れの減額計画について、2027年3月までの新たな計画を決定し、月間買入れ額を段階的に減額していくことで、国債市場の機能度改善を目指すとした。日本銀行は、不確実性が極めて高い現在、リスク・マネジメント・アプローチに基づく頑健な政策運営を心掛けていくと強調した。