沖縄総合事務局は、沖縄経済の構造的特徴と最近の特徴的な動向について、全国財務局長会議での報告資料として詳細な分析を行いました。本報告では、本土から約1,600km離れた島嶼県である沖縄の独特な経済構造と、近年の政策効果による構造変化について包括的な検討が行われています。
沖縄経済の構造的特徴として、第3次産業(サービス業)の比重が極めて高く、県内総生産の約85%を占めています。これは全国平均の約75%を大幅に上回る水準で、特に観光業、小売業、飲食サービス業の集積が顕著となっています。観光関連産業だけで県内総生産の約20%、雇用の約25%を占めており、沖縄経済の基幹産業としての地位を確立しています。
観光業の特徴について、年間入域観光客数は約1,000万人規模(コロナ禍前)に達し、観光収入は約7,000億円と県内総生産の約15%に相当します。観光客の構成は、国内客が約85%、外国人客が約15%となっており、特に東京、大阪、福岡からの国内客と、韓国、台湾、中国、香港からの外国人客が多数を占めています。滞在期間は平均3.8日と比較的長く、一人当たり観光消費額は約7万円と高水準を維持しています。
製造業については、県内総生産に占める割合は約5%と全国平均(約20%)を大幅に下回っていますが、独特な産業構造を有しています。食品製造業が最大の比重を占め、泡盛、黒糖、海産物加工品、健康食品などの地域資源を活用した製品が中心となっています。また、近年は情報通信関連産業の集積も進んでおり、コールセンター、ソフトウェア開発、データセンターなどの立地が拡大しています。
農林水産業は県内総生産の約1.5%と比重は小さいものの、地域経済にとって重要な役割を果たしています。主要農産物はサトウキビ、パイナップル、マンゴー、ゴーヤー、紅芋などで、これらは観光業と連携した6次産業化が進んでいます。水産業では、マグロ・カツオの遠洋漁業、モズクの養殖業、海ぶどうの栽培などが盛んで、県外・海外への出荷も拡大しています。
地理的特性による経済への影響として、本土からの物理的距離により物流コストが高く、製造業の立地には不利な条件となっています。一方で、東アジア地域の中心に位置する地理的優位性により、国際物流ハブ機能の強化が図られており、那覇空港の国際貨物取扱量は年々増加しています。
沖縄振興政策の効果について、1972年の本土復帰以来継続されている沖縄振興予算により、社会インフラの整備、産業振興、人材育成などが推進されています。特に、那覇空港の滑走路増設、高速道路網の整備、情報通信基盤の充実などにより、経済活動の基盤が大幅に改善されています。
最近の特徴的な動向として、コロナ禍からの観光業の回復が最も注目されます。2025年に入り、入域観光客数が急速に回復しており、6月時点でコロナ禍前の95%水準まで回復しています。特に、本土からの観光需要の回復が顕著で、航空路線の増便や旅行商品の多様化により、観光業全体の活況が続いています。
デジタル化の進展も重要な動向の一つで、県内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、生産性向上と新たなビジネスモデルの創出が進んでいます。特に、観光業でのオンライン予約システムの普及、農業でのスマート農業技術の導入、小売業でのeコマース展開などが加速しています。
再生可能エネルギーの導入も積極的に進められており、豊富な太陽光と風力資源を活用した発電設備の設置が拡大しています。県内電力需要の約10%を再生可能エネルギーで賄うまでに成長しており、エネルギー自給率の向上と環境負荷軽減の両面で効果を上げています。
今後の課題として、人口減少・高齢化への対応、産業構造の多様化、持続可能な観光業の発展、離島地域の振興、防災・減災対策の強化などが重要な政策課題として位置づけられています。