防衛省防衛研究所が2025年7月25日に公表したイエメン情勢クォータリー(2025年4月~6月)について、地域情勢の変化と安全保障への影響を分析している。
2025年第2四半期のイエメン情勢は、米国・フーシー派間の停戦合意とイラン・イスラエル間の停戦により、大きな転換点を迎えた。これらの停戦により、中東地域全体の緊張緩和と海上交通路の安全確保に向けた新たな展開がみられる。
フーシー派は、紅海での商船攻撃を停止し、サウジアラビアとの対話再開にも応じている。これにより、紅海・アデン湾での海上交通の安全性が大幅に改善され、国際物流への影響も軽減されている。
イラン・イスラエル間の停戦は、中東地域全体の代理戦争の構図に変化をもたらしている。イエメンにおけるイランの影響力は依然として大きいが、直接的な軍事支援は縮小傾向にある。
国際的な支援体制では、国連、EU、米国などが人道支援と復興支援を強化している。特に、港湾機能の回復、基本的インフラの整備、人道回廊の確保などが重点的に進められている。
地域安全保障への影響では、サウジアラビア主導の有志連合の役割変化、湾岸協力会議(GCC)諸国の関与拡大、エジプトの仲介役強化などがみられる。これらの変化は、地域の新たな安全保障枠組み構築につながる可能性がある。
今後の課題として、停戦の持続性確保、政治的解決に向けた対話促進、復興資金の確保、地域全体の安定化などが挙げられる。日本にとっても、エネルギー安全保障と海上交通路の確保の観点から重要な情勢変化となっている。