防衛省防衛研究所が公表した「NIDS Research & Analysis」第2号について報告したものです。
令和7年8月1日に防衛研究所が新しいレポートシリーズ「NIDS Research & Analysis」の第2号として公表された論文は、菊地茂雄防衛研究官による翻訳論文で、米陸軍ドクトリンの発展過程を学習プロセスの観点から分析したものです。
NIDS Research & Analysisシリーズについて
本シリーズは、世界各地で深刻化するさまざまな安全保障課題への理解と対応策を検討するために創設された新しい形のレポートシリーズです。複雑な事実関係の整理・解説から本格的な分析の成果まで、現代の安全保障課題の理解に資する多様なコンテンツをウェブ上で随時発信することを目的としています。
米陸軍ドクトリンの学習プロセス
本論文では、米陸軍がドクトリン(軍事教義)を発展させてきた過程を、組織学習の理論的枠組みを用いて分析しています。米陸軍は長年にわたり、実戦経験、演習結果、技術革新、同盟国との協力などから得られた教訓を組織的に蓄積し、それをドクトリンの改訂・発展に活用してきました。
特に冷戦後の複雑な安全保障環境の変化に対応するため、米陸軍は従来の大規模正規戦中心のドクトリンから、非対称戦、都市戦、多領域作戦など多様な作戦環境に対応できる柔軟性の高いドクトリンへと進化させてきた過程が詳述されています。
日本の防衛政策への示唆
米陸軍の経験は、自衛隊のドクトリン発展や組織学習システムの構築において重要な参考事例となります。特に、実戦経験が限られる自衛隊にとって、同盟国の経験や教訓を組織的に学習し、自らのドクトリンに反映させるメカニズムの構築は重要な課題です。
また、技術革新の急速な進展や安全保障環境の変化に対応するため、継続的にドクトリンを見直し、改善していく組織文化の醸成についても重要な示唆が得られています。
記事は、米陸軍のドクトリン発展過程から得られる教訓が、日本の防衛政策や自衛隊の能力向上に向けた組織改革に活用できる貴重な知見を提供していると結論づけています。