農畜産業振興機構が発行する広報webマガジン「alic」2025年8月号に掲載された、国産冷凍野菜の現状と宮崎県都城市のイシハラフーズ株式会社の取り組みを紹介したものです。
国産冷凍野菜の現状
冷凍野菜の消費量は10年前と比べて20％程度増加しており、ブロッコリー、えだまめ、ほうれんそうなどの単一製品から、和風野菜やスープ用野菜といったミックス製品まで多様な商品が展開されています。しかし、野菜全体の食料自給率（カロリーベース）が76％である一方、冷凍野菜の国内生産量の割合は5～10％程度と推定されており、国産の冷凍野菜は非常に少ないのが現状です。
このような状況の中で、家庭用冷凍野菜には産地や栽培方法にこだわった国産野菜を使用したものも見られ、消費者の選択肢が広がっています。
イシハラフーズの取り組み
宮崎県都城市のイシハラフーズ株式会社は、栽培方法にこだわった国産野菜を使用した冷凍野菜を製造している会社として紹介されています。同社は10品目以上の冷凍野菜を製造しており、そのほぼすべての原料を自社ほ場で生産しています。
特筆すべき点として、すべての自社ほ場で特別栽培農産物または有機JAS認証を取得した有機農産物の生産を行っています。特別栽培は化学肥料と化学合成農薬の使用を地域における慣行的な使用量に比べ5割以上低減する栽培方法です。有機農産物は、周辺からの使用禁止資材の飛来防止措置、種まき・植え付け前2年以上の化学肥料・農薬不使用、遺伝子組み換え技術や放射線照射の禁止など、厳格な基準に従って生産されています。
生産技術と品質管理
同社では、高度な機械化を進めることで省力化と品質の均一化を図っています。各ほ場にQRコード付きの表示板を設置し、作業情報を現場ですぐに入力してシステム上で一元管理することで、ほ場管理を高度化しています。また、JGAP認証を取得し、農業生産工程管理による持続的な改善活動を実践しています。
さらに、同社のほ場は工場から20km以内に位置しており、収穫後数時間以内に工場に搬入され、鮮度の高い状態で冷凍加工を行うことで、栄養や風味を保持した製品の製造を可能にしています。冷凍野菜は収穫後すぐに加工を行うことで、生鮮であれば輸送中に低下してしまう栄養素を保持できる利点があります。
今後の展望
国産の冷凍野菜は各社がさまざまな工夫を凝らしており、複数の野菜をミックスした商品など、ラインナップも豊富になってきています。冷凍野菜を活用したレシピは製造企業やスーパーなど、さまざまなところで紹介されており、利用の幅が広がっています。
記事は、便利な冷凍野菜を購入する際は産地や生産方法などの情報を参考にすることを推奨し、国産冷凍野菜の品質向上と普及促進の重要性を強調しています。