このロードマップは、金融審議会のワーキング・グループが2025年7月17日時点で策定した、サステナビリティ開示基準の適用及び保証制度の導入に関する具体的な実施計画を示した重要な文書です。グローバルな投資家との建設的な対話を志向するプライム市場上場企業を対象に、段階的かつ体系的な制度導入を図るものです。
開示基準の適用については、企業規模(時価総額)に応じた段階的アプローチを採用しています。まず、時価総額3兆円以上の大企業(68社、プライム市場の時価総額の54.1%をカバー)から2027年3月期に適用を開始し、続いて時価総額1兆円以上の企業(171社、72.5%)が2028年3月期、5,000億円以上の企業(284社、80.8%)が2029年3月期から適用開始となります。これにより、3年間でプライム市場の時価総額の8割以上をカバーする企業がSSBJ基準に準拠した開示を行うことになります。
保証制度については、開示基準の適用開始時期の翌年から義務化される計画です。保証水準は限定的保証とし、合理的保証への移行は検討しないことが明記されています。保証範囲は当初2年間は温室効果ガス排出量のScope1・2、ガバナンス及びリスク管理に限定し、3年目以降の拡大については国際動向等を踏まえて今後検討することとされています。
経過措置として、適用開始から2年間は二段階開示(サステナビリティ情報を有価証券報告書の提出後に追加で開示すること)が認められます。これは、企業の実務負担に配慮し、制度の円滑な導入を図るための措置です。時価総額3兆円以上の企業では2029年3月期から、それ以下の企業も順次、有価証券報告書と同時開示に移行します。
任意適用は2026年3月期から開始され、好事例の収集やプリンシプルベースのガイダンスを通じて促進される予定です。これにより、早期に準備が整った企業は自主的に高品質な開示を開始でき、市場全体の開示水準の向上が期待されます。
時価総額5,000億円未満の企業への適用については、企業の開示状況や投資家のニーズ等を踏まえて今後検討することとされており、将来的にはより幅広い企業への適用拡大が視野に入れられています。時価総額の算定方法については、5事業年度末の平均値等を参考にしつつ検討される予定です。
このロードマップは、我が国のサステナビリティ情報開示を国際水準に引き上げるための明確な道筋を示すものであり、企業にとっては準備期間を含めた予見可能性を高め、投資家にとっては段階的に比較可能で信頼性の高い情報が提供されることを保証するものとなっています。