独立行政法人経済産業研究所が公表した、小学6年生時の学力・体力ランクが中学3年生の学業・体力成果に与える影響について分析した研究論文です。
研究データと手法 首都圏の大規模自治体の行政データを用いて、小学6年生の順位と中学3年生の成績の関係を定量的に分析しました。また、生徒の行動や意見に関するアンケートデータを活用し、順位効果の発生メカニズムを解明しています。研究チームは早稲田大学とRIETIの共同体制で、教育政策のミクロ計量分析プロジェクトの一環として実施されました。
主要な研究成果 小学6年生の学力と体力の順位が、対応する中学3年生の成績に正の影響を与えることが確認されました。これらの順位効果はほぼ直線的に現れ、特に学業成績においては男子生徒でより顕著な効果が観察されています。社会経済的地位や教師の性別による効果の有意な差異は見られませんでした。
分野間の相互影響 学力と体力の間に直接的な波及効果は確認されませんでしたが、数学の順位が高い生徒ほど国語の成績が良いという関連性が明らかになりました。この発見は、特定の学習分野における順位が他の学習分野にも間接的に影響する可能性を示唆しています。
性別による効果の違い 興味深いことに、順位効果の現れ方に明確な性差が確認されました。女子生徒では順位が高いほど学習意欲の向上が見られる一方、男子生徒では自分の能力に関する誤った認識効果が観察されています。教師や親からの外的影響については、有意な効果は検出されませんでした。
記事は、生徒の学業成果を分析する際に学力と体力の両方の順位を考慮することの重要性を強調し、教育における相互効果のより包括的な理解に大きく貢献する研究結果を提示しています。