独立行政法人経済産業研究所が2025年6月18日に開催した、エネルギー白書2025の内容をもとに世界のエネルギー動向を解説するBBLセミナーの議事録です。
セミナー概要と政策的背景 経済産業省資源エネルギー庁の植田一全調査広報室長が講演し、今回で22回目となるエネルギー白書2025について詳細に解説しました。2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」「第7次エネルギー基本計画」の政策的背景のもと、日本のエネルギー安全保障確保と脱炭素化の同時達成に向けた取り組みが紹介されています。
福島復興の具体的進捗 東京電力福島第一原子力発電所では燃料デブリの取り出しが本格化し、2号機で2回目の試験的取り出しに成功しています。ALPS処理水の放出完了に伴うタンク解体作業も開始され、日中間では分析結果の正常確認を前提に日本産水産物の輸入再開協議で一致しました。特定帰還居住区域制度に基づく避難指示解除も具体化し、福島イノベーション・コースト構想では「加速化プラン2.0」を2024年9月に策定してペロブスカイト太陽光電池の実証を推進しています。
革新的エネルギー技術の開発状況 日本のエネルギー自給率15.3%(2023年)という課題に対し、複数の革新技術開発が進行中です。ペロブスカイト太陽光電池は軽量・柔軟性という特長で設置場所の制約を解消し、浮体式洋上風力発電は海底固定が不要で大型化によるコスト効率向上を目指しています。地熱発電ではクローズドループ方式により温泉事業との競合を回避し、日本の豊富な熱源を活用した商用化を世界に先駆けて実現する計画です。
ワット・ビット連携政策の展開 データセンター需要急増に対応する新政策として「ワット・ビット連携」が注目されています。脱炭素電源の地域偏在という課題に対し、電力系統余力があるエリアに「ウェルカムゾーン」を設定してデータセンター立地を促進する仕組みです。光電融合技術による大容量・低遅延・低消費電力通信の実現により、地理的制約を緩和しながら脱炭素電源との効率的な組み合わせを図ります。
主要国の温室効果ガス削減比較 パリ協定に基づく各国の削減目標(NDC)進捗では、日本は2030年度46%削減目標に向けて着実に推進しています。一方、米国・EUは進捗遅れが顕著で、トランプ政権のパリ協定脱退表明により米国の削減取り組みは実質的に停止状態です。日本と英国のみが排出削減軌道に乗っており、最終エネルギー消費削減と非化石電源比率向上の両立が成功要因として分析されています。
記事は、世界的な脱炭素政策の不確実性が高まる中で、日本が技術革新と政策連携により持続可能なエネルギー転換を主導する重要性を示した政策セミナーの成果を提示しています。