ロンドンの調査会社Z/YENが公表する国際金融都市の競争力指標The Global Financial Centres Index(GFCI)において、東京金融市場がトップ5から22位に陥落した現状と、その背景にあるフィンテック革命の影響について分析したものです。
GFCIは2007年3月から半年に一度公表され、金融ビジネスの事業環境、人的資本、市場インフラ、金融セクターの発展性、市場の評判という5つの主要な競争力領域から定量的分析を行い、Connectivity、Diversity、Specialtyという3つの視点から定性的分析を実施しています。2025年3月公表のGFCI37では、東京が22位という衝撃的な結果となりました。
GFCIレポート開始以来、ロンドンとニューヨークは世界の金融センターの2強として君臨してきました。2007年から2013年まではロンドンが1位を占める期間が長かったものの、2014年以降はニューヨークが1位となる頻度が増加し、両都市が交互に1位と2位を入れ替える状態となりました。この変化の背景には、リーマンショック以降の米国経済の成長、シリコンバレーを中心としたフィンテックの発展、ブレグジットの影響などがあります。
アジアでは、香港とシンガポールが初回から現在まで一貫して上位5位以内に名を連ねています。香港は初期に3位を安定的に維持していましたが、2020年以降は中国本土の政治情勢や地政学リスクの影響を受けています。一方、シンガポールは安定した政治、多様な人材、積極的なフィンテック推進により、2025年3月のGFCI37でも3位を維持しています。中国経済の発展に伴い、上海も2010年代に上位に食い込み、2018年から2021年まで3位から5位の常連となっていました。
東京のGFCIランキング推移は特徴的です。2007年から2009年まではトップ5圏外でしたが、2010年に初めて5位に浮上し、2020年3月のGFCI27では史上最高の3位まで躍進しました。しかし2021年以降は急激に順位を落とし、2025年3月のGFCI37では22位まで下落しています。フィンテック分野でも、2019年の6位から2024年には37位まで下落し、最新では26位に回復したものの、依然として低迷しています。
この東京の急激な順位下落の背景には、2020年以降のデジタル変革の波に十分に乗れていないことが挙げられます。この時期は、4GからGへ、Web2.0からWeb3.0へとデジタル領域のコンセプトがグローバルレベルで大きく変化した時代です。5Gは自動運転、スマートシティ、遠隔医療、VR/ARなど革新的なサービスの基盤技術であり、金融分野でもフィンテックの進化やデジタル資産の流通など多岐にわたるイノベーションを促しています。
記事は、東京金融市場が「自国経済興隆型」の強みに依存し続けた結果、グローバルな知識や資本の集積、新たなデジタル潮流への対応が遅れた可能性を指摘し、国際競争力を回復するための具体的な政策提言の必要性を結論づけています。