近畿財務局は2025年7月、管内2府4県（大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県）の経済情勢報告を公表し、「管内経済は、緩やかに回復しつつある」との総括判断を示しました。これは前月判断を維持する内容で、地域経済の基調的な回復傾向が継続していることを表しています。
個人消費の動向については、小売売上高の持ち直しや消費者マインドの改善により「持ち直している」と評価されています。特に、コロナ禍で大きく落ち込んでいたサービス消費の回復が顕著で、観光関連支出、外食産業、娯楽サービスなどで前年同月を上回る水準を記録しています。大阪・京都を中心とした観光需要の回復が消費押し上げの重要な要因となっており、インバウンド需要も段階的に回復しています。
生産活動は「緩やかに回復しつつある」状況で、製造業を中心とした改善が確認されています。近畿地域の主力産業である化学工業、金属製品製造業、電気機械工業において生産水準の持ち直しが見られ、特に半導体関連や自動車部品関連の生産が回復基調にあります。また、医薬品製造業や精密機械工業といった近畿地域の特色ある産業でも堅調な推移を維持しています。
雇用情勢については「改善している」との判断が示され、有効求人倍率の上昇と完全失業率の低下が継続しています。特に、サービス業での人手不足感が強まっており、宿泊・飲食サービス業、小売業、運輸業での求人が増加しています。製造業においても技術者や技能職への需要が高まっており、労働市場の逼迫度が高まっています。
設備投資は「持ち直しの動きがみられる」状況で、製造業を中心とした投資意欲の改善が確認されています。特に、デジタル化・自動化投資や環境対応投資、生産能力増強投資などが増加傾向にあり、企業の中長期的な成長期待の回復を反映しています。
住宅建設は「弱含んでいる」状況が続いており、建築資材価格の上昇や金利動向への懸念が投資抑制要因となっています。ただし、都市部でのマンション需要は底堅く推移しており、地域間での格差が見られます。
公共投資については「前年を下回っている」状況で、国・地方自治体の財政制約により大型プロジェクトの新規着工が限定的となっています。
近畿地域の経済構造の特徴として、サービス業の比重が高く、商業・金融の中心地である大阪を核とした経済圏を形成しています。また、京都の伝統産業、神戸の港湾機能、奈良・和歌山の観光資源など、多様な産業基盤を有しており、これが地域経済の安定性を支えています。