近畿財務局は、管内2府4県（大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県）の経済構造の特徴と構造変化について詳細な分析を行いました。本報告書は、全国財務局長会議での報告資料として作成され、近畿地域の経済的特性を全国的な視点から整理したものです。
近畿地域の経済構造の最大の特徴は、サービス業の比重が極めて高いことです。域内総生産に占めるサービス業の割合は約75％と全国平均を上回っており、特に商業・金融・情報通信業の集積が顕著となっています。大阪を中心とした商業金融機能の集積により、西日本経済の中核的役割を果たしています。
製造業については、全国平均と比較して比重は相対的に低いものの、高付加価値製品を中心とした特色ある産業構造を形成しています。化学工業では医薬品製造業の集積が著しく、武田薬品工業、大塚製薬、塩野義製薬など大手医薬品メーカーの本社・研究開発拠点が立地しています。また、精密機械工業では光学機器や計測機器の製造において全国的に高いシェアを誇っています。
地域別の産業特性では、大阪府が商業・金融・情報サービス業の中心として機能し、京都府では伝統工芸品から先端技術製品まで多様な製造業が展開されています。兵庫県では神戸港を中心とした物流・貿易機能に加え、重化学工業の基盤が形成されており、奈良県では観光業と伝統産業、滋賀県では電子部品・デバイス製造業、和歌山県では石油化学工業と観光業がそれぞれの地域経済を支えています。
労働市場の特徴として、サービス業従事者の比重が高く、特に専門・技術職、管理職の割合が全国平均を上回っています。また、女性の労働参加率も相対的に高く、サービス業中心の産業構造がこの傾向を支えています。
貿易構造では、輸出品目の多様性が特徴で、化学製品、一般機械、精密機器などが主要品目となっています。輸出先は東アジア諸国が中心ですが、欧米向けの高付加価値製品の輸出も重要な位置を占めています。
近年の構造変化として、デジタル化の進展により情報通信業の比重が上昇しており、特にソフトウェア開発やデータ処理サービスの企業集積が進んでいます。また、インバウンド観光の拡大により観光関連産業の重要性が高まっており、地域経済への波及効果も拡大しています。
今後の課題として、製造業の競争力維持・向上、サービス業の生産性向上、人材確保・育成、インフラの老朽化対応などが挙げられており、これらの課題への対応が地域経済の持続的発展の鍵となると分析されています。