東海財務局は2025年7月開催の全国財務局長会議において、東海地域の経済構造と最近の管内経済情勢について詳細な報告を行いました。この報告は、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の4県を対象とした地域経済の構造的特徴と足元の経済動向を全国的な視点から分析したものです。
東海地域の経済構造の特徴として、製造業、特に輸送用機械工業(自動車産業)が地域経済の中核を占めていることが報告されています。域内総生産に占める製造業の割合は全国平均を大幅に上回る約37%となっており、特に自動車関連産業の集積度は日本最大級を誇っています。トヨタ自動車を筆頭とする完成車メーカーから、部品・素材メーカーまでの一貫した産業クラスターが形成されており、これが地域経済の基盤となっています。
輸出依存度についても、東海地域は全国平均の約15%を大きく上回る約25%となっており、特に自動車・自動車部品の輸出が全体の6割以上を占めています。主要輸出先は米国、欧州、アジア諸国であり、これらの地域の経済動向が東海地域経済に直接的な影響を与える構造となっています。
最近の管内経済情勢については、「緩やかに回復しつつある」との総括判断が示されています。個人消費は小売売上高の持ち直しや自動車販売の改善により「持ち直している」状況にあり、特にサービス消費の回復が顕著となっています。観光・レジャー関連の支出増加や外食産業の売上回復が消費回復の牽引役となっています。
生産活動では、自動車産業における半導体供給制約の緩和により、生産水準が段階的に回復しています。特に、トヨタ自動車の国内工場における稼働率上昇や、部品メーカーでの生産正常化が進んでおり、これが地域全体の製造業生産指数を押し上げています。化学工業や一般機械工業においても、設備投資関連需要の回復により堅調な推移を示しています。
雇用情勢は「緩やかに改善している」と評価され、有効求人倍率は1.5倍台を維持し、完全失業率も低水準で推移しています。製造業での人手不足感が強まる中、賃金上昇圧力も徐々に高まっており、特に技術者や熟練工に対する競争が激化しています。
今後の見通しについては、世界経済の回復継続、国内消費の持ち直し、設備投資の本格化などが地域経済の成長を支える要因として期待される一方、原材料価格の動向や為替変動、地政学的リスクなどが下振れ要因として注視すべき点として指摘されています。