ジェトロが2025年7月に公表したエジプト市場の消費者動向調査レポートで、人口約1億500万人を擁する中東・アフリカ地域最大の消費市場であるエジプトのライフスタイルと消費行動の変化について詳細な分析を行った重要な市場調査です。本調査は、カイロ、アレクサンドリア、ギザを中心とした都市部住民2,500人を対象に実施されました。
経済環境の変化として、エジプトの1人当たりGDPは約3,800ドル(2024年)と中東地域では中位水準にあり、中間層人口は約2,500万人(全人口の約24%)と推計されています。若年層が人口の約60%を占める人口構造により、消費市場の活力が維持されています。通貨エジプトポンドの変動により輸入品価格が上昇する一方、国産品への回帰傾向も見られます。
消費行動の特徴では、家計支出に占める食費の割合が約45%と高く、次いで住居費約20%、交通費約12%となっています。食品消費では、パン・穀物類(30%)、肉類(25%)、野菜・果物(20%)が上位を占め、伝統的な食文化が色濃く残っています。外食頻度は週平均2.1回と増加傾向にあり、特に若年層では国際的なファストフードチェーンの利用が拡大しています。
デジタル化の進展について、スマートフォン普及率は約78%に達し、インターネット利用率は約65%となっています。eコマース利用経験者は全体の約42%で、主な購入品目は衣料品(65%)、電子機器(48%)、書籍・教育用品(38%)となっています。決済手段では現金決済が依然として主流(約70%)ですが、モバイル決済の利用も年間約35%のペースで拡大しています。
住居・不動産市場では、都市部の住宅価格が過去5年間で約40%上昇し、若年層の住宅取得が困難になっています。そのため、賃貸住宅需要が拡大しており、特にシェアハウスや長期賃貸の利用が増加しています。住居の選択基準では、立地・交通アクセス(85%)、価格(78%)、安全性(65%)が重視されています。