経済産業省の経済産業ジャーナルが特集する「丈夫な経済のお守り 経済安全保障」シリーズ第5弾として、海底ケーブル産業における日本企業の競争力強化と世界シェア拡大戦略について詳細な分析を行った重要な政策レポートです。本稿では、デジタル経済の基盤インフラである海底ケーブルの战略的重要性と、日本の技術的優位性を活かした国際展開について論じています。
海底ケーブルの戦略的重要性について、全世界のインターネット通信の約99％が海底ケーブルを経由しており、まさに「データの大動脈」として現代経済の基盤を支えています。総延長は約130万kmに達し、全世界で約500本の海底ケーブルが敷設されています。市場規模は年間約180億ドルで、年平均成長率約8％の高成長を続けており、5G、IoT、クラウドサービスの普及により需要は今後も拡大が予想されています。
日本企業の技術的優位性では、NEC、住友電工、古河電工などが世界トップクラスの技術力を有しています。特に、高信頼性・長寿命（25年以上）、深海対応技術（水深8,000m以上）、大容量伝送技術（毎秒数十テラビット）において世界最高水準の性能を実現しています。日本企業の世界シェアは約35％と、米国企業（約40％）に次ぐ第2位の地位を占めています。
国際競争環境の分析では、米国のサブコム社（TEスコネクティビティ傘下）が約25％のシェアで首位に立ち、中国のHMN Technologies（華為技術傘下）が急速にシェアを拡大し約15％を占めています。欧州ではアルカテル・サブマリン・ネットワークス（フィンランド・ノキア傘下）が約20％のシェアを維持しており、技術力と価格競争力の両面での競争が激化しています。
日本政府の支援政策として、「海底ケーブル等の情報通信インフラの強靱化に向けた方策」が策定され、技術開発支援、国際協力の推進、サプライチェーンの多様化・強靱化が重点施策として位置づけられています。具体的には、研究開発費補助、海外展開支援、人材育成支援等に年間約200億円の予算が計上されています。
信頼性を基軸とした競争戦略では、日本企業は「信頼性」「品質」「技術力」を核とした差別化戦略を展開しています。海底ケーブルの故障率は日本製が年間0.05％と世界最低水準を実現しており、長期運用における Total Cost of Ownership（TCO）の優位性が評価されています。また、地震・津波等の自然災害に対する耐久性技術でも世界をリードしています。