科学技術政策における非連続イノベーションの評価手法について、メタサイエンス研究の最新動向から解説したものです。
主要なポイント
1. 非連続度(Disruption Index)による評価手法
- 2019年にシカゴ大学チームが開発し、『Nature』誌に掲載された指標
- 対象論文の後続論文を3分類(対象のみ引用、両方引用、参考文献のみ引用)して計算
- 完全に破壊的な論文はD=1、深化型の論文はD=−1となる
- ワトソン&クリックのDNA構造論文(D=0.96)、マンデルブロのフラクタル論文(D=0.95)などが高評価
2. 日本の研究の非連続度評価
- 被引用数トップは赤池弘次氏の「赤池情報量規準(AIC)」論文で4.8万回引用
- 非連続度トップは藤嶋昭氏の「光触媒」論文でD=0.998と極めて高い値
- トヨタ自動車の「トヨタ製造システムとかんばん方式」もD値が高い
- 田村浩一郎教授のMEGAシリーズは被引用数は多いが、非連続度は低い(深化型)
3. 新規性(Novelty)による評価手法
- 非連続度の「昔の研究しか評価できない」弱点を補完
- 分野ペア初出:過去にない新たな分野の組み合わせを評価
- 分野ペア距離:組み合わせの珍しさを評価
- 単語ペア初出・距離:論文概要の単語組み合わせから新規性を測定
4. 政策ツールとしての実践的応用
- 英国では「Metascience Novelty Indicators Challenge」を開催予定
- 賞金30万ポンド(約6,000万円)でエルゼビア社、RAND研究所などが共催
- 重点分野設定やリスク分析への活用が期待される
- 定量指標の限界を認識し、定性評価との組み合わせが重要
記事は、これらの定量評価手法が技術の非連続性や新規性を早期に捉え、効果的な政策立案に活用できる可能性を示しつつ、その限界も踏まえた適切な運用の必要性を結論づけています。