生産性向上が賃金上昇に反映されなかったのはなぜか:わが国のデフレ期からの教訓
概要
本稿は、1990年代後半以降に生じた日本の実質賃金と生産性の乖離について、デフレ期に定着した賃金・物価が上がらない考え方や慣行の役割を分析したAbe, Hirano, and Kaihatsu (2026)の概要を紹介する。名目賃金の硬直性は、トレンドインフレの低下と、労使交渉で賃上げより雇用安定を優先する慣行によって強まり、賃金を通じた労働移動を停滞させた可能性が示される。ただし、交易条件や非正規雇用など他の要因は明示的に扱っていない。
この要約はAIによって自動生成されたものです。内容の正確性については元記事をご確認ください。
要点
- デフレ期の賃金硬直性が、実質賃金と生産性の乖離拡大の一因となった可能性がある。
- トレンドインフレの低下と雇用安定を優先する慣行が、賃金硬直性を強めた。
- 賃金硬直性は、労働移動の停滞を通じて経済全体の生産性を下押しした可能性がある。
概要
日本では1990年代後半以降、生産性が上昇する一方、実質賃金は横ばいで推移し、乖離が拡大した。デフレ期には名目賃金上昇率がゼロ%近辺に集中し、生産性向上が賃金へ反映されにくかった。
分析は、デフレ期に根付いた賃金・物価が上がらない考え方や慣行に着目し、賃金硬直性の経路を理論・実証の両面から検討した。
影響
賃金硬直性は実質賃金を下押しし、賃金をシグナルとした労働移動の停滞を通じて、経済全体の生産性も下押しした可能性が示唆された。
デフレ期に根付いた考え方や慣行からの脱却は、賃金硬直性を緩和し、資源配分の効率化を通じて生産性を改善しうると示唆される。
詳細
分析では、上下両方向の閾値を持つフリクション・モデルで賃金設定を推計し、潜在的な賃金上昇率が一定範囲内なら名目賃金が据え置かれる仕組みを検討した。デフレ期には賃上げ方向の閾値が上昇した。
理論モデルは、トレンドインフレの水準と労使交渉での賃金の重視度合いを要因とした。反実仮想シミュレーションと企業のミクロデータ分析で、賃金硬直性と労働移動・生産性の関係を検証した。効果は一定の仮定に基づく試算である。
本稿は賃金硬直性の経路に焦点を当て、交易条件の悪化や非正規雇用の拡大など他の要因は明示的に考慮していない。