令和8年7月月例経済報告:緩やかな回復と中東情勢への警戒
概要
内閣府は令和8年7月の日本経済について、景気は緩やかに回復しているものの、中東情勢の影響を注視する必要があると判断した。個人消費、設備投資、輸出、雇用には持ち直しや改善がみられ、企業収益も改善している。一方、生産は横ばい、住宅建設は弱含みで、金融資本市場の変動や海外経済の不透明感が下押しリスクとなっている。政府は物価高対策、燃料油や電気・都市ガス料金への負担軽減、原油の安定供給、補正予算の機動的執行を進め、日本銀行と連携して2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指す。
要点
- 景気判断は前月から据え置かれた。
- 雇用・所得の改善が回復を支える見通しである。
- 中東情勢と金融市場の変動が主要な下押しリスクとなっている。
- 日本銀行は短期金利を1.0%程度で推移させる方針を示している。
概要
内閣府は、令和8年7月の日本経済を「景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」と総括した。個人消費は持ち直し、設備投資は持ち直している。輸出にも回復の動きがみられ、雇用情勢は改善している。
一方、生産は横ばい、住宅建設は弱含みである。企業収益は改善しているが、企業の先行き判断はやや慎重で、消費者物価は緩やかに上昇している。世界経済も一部地域に弱さを残しながら持ち直しているが、中東情勢を含む不透明感が続いている。
先行きは、雇用・所得環境の改善と各種政策が緩やかな回復を支えることが期待される。ただし、中東情勢や金融資本市場の変動が国内外の経済に及ぼす影響を引き続き見極める必要がある。
主要数値
- 報告日
- 令和8年7月29日
- 日本銀行の無担保コールレート誘導水準
- 1.0%程度
- 日本銀行の物価安定目標
- 2%
- 完全失業率(令和8年5月)
- 2.5%
- 経常利益の前年同期比(令和8年1-3月期)
- 14.6%増
- 新設住宅着工戸数の年率(令和8年5月)
- 75.7万戸
影響
家計では、実質総雇用者所得の緩やかな増加が消費の下支えとなる一方、物価上昇と消費者マインドの動向が購買力や支出の持続性を左右する。燃料やエネルギー価格の変動は、生活コストにも影響しうる。
企業では、収益改善と人手不足を背景に設備投資や省力化対応が進む余地がある。ただし、海外需要、原材料・燃料の調達、金融市場の変動への警戒から、先行きの投資や業況判断は慎重になりやすい。
政策運営では、国内の回復を維持しながら、海外発の供給制約や市場変動に即応することが課題となる。地域経済に対しては、公共投資が堅調に推移する見込みが示され、需要面の支えとなる。
詳細
需要面では、民間最終消費支出の実質値が令和8年1-3月期に前期比0.3%増、5月の小売業販売額が前月比1.7%増となった。設備投資は令和8年1-3月期に前期比2.0%減だったが、機械受注は持ち直し、令和8年度計画は増加が見込まれる。公共投資は、令和7年度補正予算で約2.5兆円が追加され、補正後は前年度比2.3%増となった。
企業収益では、経常利益が令和8年1-3月期に前年比14.6%増、製造業は42.9%増、非製造業は1.4%増だった。倒産件数は5月の780件から6月の1,021件へ、負債総額は1,211億円から1,331億円へ増加した。雇用人員判断DIは全産業で-37となり、人手不足感は高い水準にある。
物価は、6月の国内企業物価が前月比0.4%上昇し、消費者物価は生鮮食品・エネルギーを除く総合で前年比1.6%上昇した。金融面では、無担保コールレートが0.97%台、長期金利が2.6%台から2.8%台で推移し、全国銀行の貸出平残は前年比6.3%増加した。
政府は、7月21日に閣議決定した基本方針2026に基づき、「責任ある積極財政」の下で「強い経済」と財政の持続可能性を一体的に目指す。中東情勢への対応として、燃料油の激変緩和、電気・都市ガス料金の負担軽減、代替調達、必要に応じた備蓄放出、重要物資の安定供給、補正予算の機動的執行を進める。政府と日本銀行は連携し、賃金と物価の好循環を確認しながら物価安定目標の実現を図る。
海外では、米国の令和8年1-3月期GDPが前期比0.5%増、中国の令和8年4-6月期GDPが前年同期比4.3%増、台湾が令和8年1-3月期に14.5%増、インドが同7.8%増となった。米国の政策金利は3.50%から3.75%、欧州中央銀行の預金ファシリティ金利は2.25%、イングランド銀行の政策金利は3.75%で据え置かれた。