日本の統合防空ミサイル防衛と反撃能力の方針
概要
日本は、イージス艦による上層迎撃、PAC-3による下層迎撃、自動警戒管制システムJADGEによる連携を柱に弾道ミサイル防衛を整備してきた。近年は、周辺国のミサイル戦力増強、発射の秘匿性・即時性や精密打撃能力の向上、極超音速兵器の開発・配備により脅威が多様化・高度化している。これに対応するため、センサーとシューターをネットワークで一元運用する統合防空ミサイル防衛を進め、ミサイル防衛網の強化と、スタンド・オフ防衛能力を活用した反撃能力を組み合わせ、攻撃への対処と抑止を目指している。
要点
- 弾道ミサイル防衛は上層・下層の多層迎撃を基本とする。
- ミサイル防衛システムの整備は2004(平成16)年度に始まった。
- 極超音速兵器などにより経空脅威は多様化・複雑化・高度化している。
- 統合防空ミサイル防衛は、迎撃と反撃能力を組み合わせて攻撃を抑止する。
概要
弾道ミサイルは、ロケットエンジンで発射された後、放物線状の弾道軌道を飛翔する兵器である。日本の弾道ミサイル防衛は、イージス艦による上層での迎撃と、ペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システムJADGEで連携させる多層防衛を基本としている。
日本はミサイル攻撃などへの対応を目的に、2004(平成16)年度からミサイル防衛システムの整備を開始した。イージス艦への弾道ミサイル対処能力の付与やPAC-3の配備を進め、弾道ミサイル攻撃への独自の体制を整備している。
近年、周辺ではミサイル戦力が質・量ともに著しく増強され、ミサイルの発射も繰り返されているため、我が国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている。
影響
脅威の多様化により、従来のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある。そのため、探知・追尾能力や迎撃能力を抜本的に強化するとともに、各種センサー・シューターを一元的かつ最適に運用できる体制の確立に取り組んでいる。
統合防空ミサイル防衛では、強化したミサイル防衛網により迎撃しつつ、反撃能力によって相手のミサイル発射を制約し、ミサイル防衛と相まってミサイル攻撃そのものの抑止を図る。
スタンド・オフ防衛能力の強化は、島嶼部を含む日本へ侵攻する艦艇や上陸部隊に対し、脅威圏の外側から対処する能力にも関係する。
詳細
弾道ミサイル対処では、8隻のイージス艦と全国のPAC-3部隊による多層防空体制を維持する。PAC-3はイージス艦や拠点を防護するため全国各地に分散配備され、状況に応じて機動・展開される。
弾道ミサイルなどへの破壊措置が命じられた場合は、統合作戦司令官によるJADGEなどを通じた一元的な指揮のもと、効果的に対処する。
周辺国などは、発射台付き車両TELや潜水艦など多様なプラットフォームを用いて、発射の秘匿性と即時性を高めている。また、精密打撃能力も向上している。
新たな脅威には、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイル、弾道ミサイルから発射され大気圏突入後に極超音速で滑空・機動するとされる極超音速滑空兵器HGV、スクラムジェットエンジンなどにより極超音速飛翔を可能とする極超音速巡航ミサイルHCMが含まれる。
統合防空ミサイル防衛では、各種センサーとシューターをネットワークで結び、一元的かつ最適に運用できる体制の確立に取り組む。反撃能力は、国家防衛戦略などに基づき、攻撃を防ぐための必要最小限度の自衛措置として、相手の領域で有効な反撃を加える能力とされ、スタンド・オフ防衛能力などを活用する。