FATF暗号資産規制基準の実施状況評価
金融庁が2025年6月27日に公表した金融活動作業部会(FATF)報告書は、暗号資産及び暗号資産サービス・プロバイダー(VASP)に対する国際的なマネーロンダリング・テロ資金供与対策基準の実施状況を詳細に評価している。
FATF基準の実施進捗状況
グローバルな規制枠組みの確立:
- FATF勧告15の暗号資産分野への適用状況を包括評価
- 「トラベルルール」の各国実装状況と課題の特定
- 暗号資産取引の透明性向上に向けた国際協調の進展
VASP監督体制の強化:
- 各国におけるVASPライセンス制度の導入・運用状況
- 顧客確認(KYC)・取引監視体制の高度化
- 規制当局の監督能力向上と執行体制の充実
重要VASP活動法域の動向
主要法域の規制対応:
- 米国・欧州・日本等主要国の規制フレームワーク整備状況
- 新興国における暗号資産規制の導入と課題
- 法域間の規制協調と監督情報共有の進展
技術革新への対応:
- DeFi(分散型金融)・NFT等新技術への規制アプローチ
- ステーブルコインに対する規制枠組みの構築
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)と民間暗号資産の関係
リスク評価と対策強化
マネーロンダリング・テロ資金供与リスク:
- 暗号資産を利用した不法行為の傾向分析
- 匿名性の高い暗号資産(プライバシーコイン)への対応
- 国境を越えた資金移転における監視体制強化
システミックリスクへの対応:
- 暗号資産市場の急激な拡大に伴う金融システムへの影響評価
- 伝統的金融機関の暗号資産業務参入に対するリスク管理
- 市場操作・詐欺防止のための監督・執行体制整備
日本の対応状況と課題
国内規制の整備状況:
- 改正資金決済法による暗号資産交換業の規制強化
- 金融商品取引法の適用拡大による投資家保護強化
- 犯罪収益移転防止法に基づく疑わしい取引の届出制度
国際協調への貢献:
- FATF基準の国内実装における先進的取組
- アジア・太平洋地域における技術支援・能力構築支援
- G20・FSB等国際フォーラムでの政策調整への積極参画
今後の課題と展望
技術革新と規制のバランス:
- イノベーション促進と適切なリスク管理の両立
- サンドボックス制度等による新技術の実証支援
- 国際的な規制調和と競争力維持の同時実現
執行体制の継続的強化:
- 規制当局の専門性向上と人材育成
- 民間事業者との建設的対話による実効性向上
- デジタル時代に対応した監督手法の高度化