中東情勢緊迫化が世界経済と国際商品市場に及ぼした影響|第4章欧州経済、投資が下支えする一方で消費・輸出と財政に課題

|内閣府|元記事

概要

2026年前半の欧州では、ユーロ圏と英国の景気がともに持ち直している。ユーロ圏はスペイン・イタリアの成長、政府主導の投資、雇用の底堅さに支えられる一方、中東情勢の悪化による原油価格上昇で個人消費の回復が鈍化し、財輸出も停滞している。アイルランドの多国籍企業取引がGDPを大きく振らせる統計上の特殊要因もみられる。英国は2026年1-3月期に実質GDP成長率が前期比年率2.5%となり消費が回復したが、雇用・求人の弱さ、消費者信頼感の悪化、投資の鈍化が重石となっている。EUではRRF、防衛投資、ドイツの特別基金などが景気を支える反面、RRFの期限後の反動減と財政余力の制約が懸念される。AI分野では欧州の投資・供給エコシステムの薄さが課題であり、EUは半導体、クラウド、AI、製造業の域内能力強化を進めている。

この要約はAIによって自動生成されたものです。内容の正確性については元記事をご確認ください。

要点

  • 欧州景気は持ち直しているが、内外需の力強さには欠ける。
  • 中東情勢は消費者心理と燃料需要を下押ししている。
  • 政府主導の投資が景気を支える一方、期限後の反動減が課題となる。
  • 欧州のAI課題は個別企業よりエコシステム全体の厚みにある。

概要

2026年前半の欧州経済は、ユーロ圏と英国の双方で景気の持ち直しが確認される。ただし、回復の中身は均一ではない。ユーロ圏では、感染症拡大後の観光業回復を背景にスペインとイタリアが成長に寄与し、雇用も底堅い。一方、個人消費は中東情勢の悪化と原油価格上昇を受けて回復テンポが鈍り、財輸出は中国需要の減退や自動車産業の競争力低下により停滞している。英国では消費の回復により成長率が上向いたものの、雇用や投資の弱さが残る。

ユーロ圏の2026年1-3月期のマイナス成長は、アイルランドの実質GDPが前期比年率▲40.2%となった影響が大きい。アイルランドを除けば、2025年10-12月期はプラス1.4%、2026年1-3月期はプラス1.0%であり、ECBが多国籍企業取引を調整した試算でも2026年1-3月期は前期比プラス0.2%となる。これは医薬品などの多国籍企業が欧米本社と行う企業内取引が統計を振らせたためで、域内の国内経済全体が同じ規模で悪化したことを意味しない。

ユーロ圏はブルガリアが2026年1月にユーロを正式導入したことから、特段の表記がない限り21か国として扱われる。家計消費ではサービスが2025年の構成比55.7%を占め、非耐久消費財28.6%、耐久消費財8.1%、半耐久消費財7.6%が続く。労働市場では失業率が6.3%、労働参加率が75.7%で、求人率は2.2%と感染症拡大前の5年間平均をなお上回る。

主要数値

ユーロ圏の扱い(2026年1月以降)
21か国
アイルランドの実質GDP成長率(2026年1-3月期、前期比年率)
▲40.2%
英国の実質GDP成長率(2026年1-3月期、前期比年率)
2.5%
RRFの投資実施期限
2026年8月末
RRFの欧州委員会からの資金支払期限
2026年12月末
RRF実施済み額(2026年1月末時点)
5,770億ユーロ(うち融資額2,170億ユーロ)
RRFの割当要件
グリーン移行に少なくとも37%、デジタルトランスフォーメーションに20%
ドイツのインフラ・気候中立特別基金の借入上限(2025年から2036年)
最大5,000億ユーロ
EU半導体製造シェア目標(2030年)
20%
米国のAI・データ企業向けVC投資の世界シェア(2025年)
72%

影響

家計への影響は、エネルギー価格上昇を通じた実質購買力の圧迫と、先行き不安による予防的貯蓄の増加として表れる。ユーロ圏では2025年の実質家計可処分所得が2019年比108.8となる一方、家計貯蓄率は14.4%で、所得が増えても消費に回りにくい。英国でも家計貯蓄率は2025年に9.9%と、2016~2019年平均の5.7%を上回る。消費者心理の悪化は高額商品の購入を抑え、景気回復を内需から弱める可能性がある。

企業と地域には、公共投資や脱炭素化支援による需要創出と、国際競争・資本不足による分極化が同時に生じる。EUの産業加速化法案は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、自動車、ネットゼロ技術を対象に、公共調達や公的支援でEU域内生産・低炭素製品の利用を促す。製造業のGDP比を2024年の14.3%から2035年に20%へ高める目標を掲げ、鉄鋼・アルミニウムで6億ユーロ以上、自動車産業網で最大約105億ユーロの付加価値、バッテリーで85,000人、太陽光関連で58,000人の雇用を見込む。

政策運営では、成長下支えと財政規律の両立が難しくなる。EUの安定・成長協定は財政収支を対GDP比▲3%以内、公的債務を60%以内とする基準を置くが、防衛費やエネルギー対策への例外的な余地が支出拡大を促す。ドイツでは投資・防衛支出の拡大により一般政府財政収支が2027年に▲4.1%、公的債務が68.0%となる見通しである。フランスでは2025年の財政収支が▲5.1%、公的債務が115.6%に達し、2027年にはそれぞれ▲5.7%、120.2%と予測される。

詳細

ユーロ圏の投資は、RRF、欧州再軍備計画、ドイツの財政拡張によって支えられている。RRFはグリーン移行、デジタル化、持続的成長、社会的結束、制度改革、教育・技能開発の6分野を対象とし、割当額の少なくとも37%をグリーン移行、20%をデジタル化へ向ける。RRFの助成金割当は、人口、1人当たりGDP、過去の失業率を70%、過去のGDP落ち込み等を30%の基準で決める。イタリアとスペインは観光業の打撃が大きかったため割当額が大きく、設備投資の増加も目立つ。投資の実施期限と資金支払期限が2026年に集中するため、期限前の増加と期限後の反動減が想定される。

ドイツは2025年3月の基本法改正で、インフラ・気候変動対策の特別基金と、対名目GDP比1%を超える防衛費を債務ブレーキの対象外とした。特別基金は2025年から2036年まで最大5,000億ユーロを借り入れ可能で、州・地方自治体向けと気候・変革基金に各1,000億ユーロを充てる。2025年の実際の投資額は約868億ユーロで前年比17%増、2026年の投資予算は約1,287億ユーロである。民間投資には投資促進税制が導入されたが、2026年初夏には中東情勢などを背景に投資マインドが悪化した。

AI分野では、欧州は需要を生む大規模クラウド企業と半導体供給の双方で相対的に弱く、EUのデジタル製品・サービス・インフラの80%以上が域外依存とされる。AI・データ企業へのベンチャーキャピタル投資は、2025年に米国が世界の72%、EU27か国が7%で、EUの投資額は米国の約10分の1にとどまる。欧州にはMistral AI、Aleph Alpha、Celonis、ASMLなどの企業があるが、資本市場を含むエコシステム全体の規模が限られる。欧州委員会は2025年4月のAI大陸アクションプラン、同年10月のApply AIとAI in Science、RAISE、2026年6月の欧州技術主権パッケージ、チップ法2.0、クラウド及びAI開発法案を通じ、研究、利用、計算資源、半導体、データセンターの域内能力を強化しようとしている。

ユーロ圏の輸出では、2025年にサービス輸出が対GDP比16.7%、財輸出が31.9%を占める。財輸出は2022年以降おおむね横ばいで、中国需要の減退、自動車の競争力低下、高いエネルギーコストが重石となった。輸出相手国は米国17.1%、英国9.9%、ポーランド7.7%、スイス7.0%、中国6.0%で、EUは米国依存を抑えるため、2026年1月にインドとのFTA交渉を妥結し、5月にメルコスールとの暫定協定を適用、メキシコとの協定現代化にも署名した。米EU間では、2026年7月1日に米国製工業製品へのEU関税撤廃と米国産農水産品への特恵市場アクセスが発効した。

英国では、2026年1-3月期の消費回復が景気を押し上げた一方、雇用者数は2026年4月に前月差▲5.26万人、求人率は2.4%、失業率は4.9%となり、労働需給は緩和した。2025年7月開始のEV購入助成制度は、価格37,000ポンド以下の新車EVに最大3,750ポンドを補助し、PHEVやBEVの販売を前年比30%超伸ばした。財輸出は対GDP比12.7%で横ばい、サービス輸出は18.0%で、観光やビジネスサービスを背景に持ち直しが続く。

総合すると、ユーロ圏は政府消費、公的投資、スペイン・イタリアの成長寄与によって短期的に緩やかな回復を続ける可能性があるが、個人消費、財輸出、RRF終了後の投資、財政余力に注意が必要である。英国も内需の回復が続く見込みだが、高金利と雇用下振れがリスクとなる。中東情勢による欧州全体への影響は、現時点では2022年のロシアによるウクライナ侵略時より限定的である。

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