令和8年度年次経済財政報告―成長型経済への本格的移行に向けた課題―第3章 物価環境の変化と成長資本の蓄積 — 第2節 我が国企業のバランスシート ―資本ストックの更なる蓄積に向けて―
概要
我が国企業では、総資産が2000年代前半まで横ばいで推移した後に緩やかに拡大したが、主因は金融資産で、実物資産比率は低下している。感染症拡大期には借入と現預金が増え、中小企業では2023年度に総資産・売上高対比の借入分布がおおむね2019年度の姿に戻った一方、現預金の積み上がりは残る。設備更新の遅れによる資本ビンテージの長期化や、金利・中東情勢の不確実性を踏まえ、資金を設備投資へ有効に振り向けることが課題とされる。
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要点
- 金融資産主導の資産拡大で、総資産に占める実物資産の比率は低下傾向にある。
- 中小企業を中心に現預金保有が増え、感染症拡大後も積み上がりが残っている。
- 設備投資の不足により、日本の資本ビンテージは主要国で最も長い水準となっている。
- 長期的な成長力の維持には、官民連携による国内設備投資の促進が重要である。
概要
企業の総資産は2000年代前半まで横ばいの後に緩やかに拡大したが、主因は金融資産で、実物資産比率は2000年代以降低下した。設備投資は2010年代半ば頃から増加したものの、比率低下は反転していない。
主要数値
- 2024年度末の企業現預金残高(資金循環統計)
- 364兆円
- 2024年度末の企業現預金残高(法人企業統計)
- 301兆円
- 試算上の貸出金利上昇幅
- 0.25%ポイント
- 試算上の設備投資伸び率への最大影響
- 0.36%ポイント
影響
現預金を過度に積み上げ、借入と現預金がともに高水準の企業が残ると、資金が設備投資などに活用されず、資本ストックの蓄積と長期的な経済成長を下押しする可能性がある。
現時点で金融環境が設備投資を大きく抑制する様子はないが、金利上昇や中東情勢の長期化による不確実性、原材料不足・価格高騰などが投資意欲を損なう可能性がある。
詳細
2020年には、ゼロゼロ融資を含む資金繰り支援と金融機関の緩和的な貸出態度で借入と現預金が増加した。中小企業では、総資産・売上高対比でみた借入の累積分布が2023年度におおむね2019年度の姿へ戻った一方、借入残高全体は過去トレンドを上回り、現預金の積み上がりも残った。
現預金残高は統計により定義と推計方法が異なる。資金循環統計は残差推計、法人企業統計は企業への標本調査を用いる。実物面では設備更新の遅れで資本ビンテージが長期化し、資本の質と生産性を損ねるおそれがあり、産業特性に応じた設備投資促進が論点となる。