総務省の「電波有効利用委員会価額競争実施方法検討作業班第2回会合」は、周波数オークション制度の具体的実施方法について専門的な検討を行った会合の記録です。
会合概要では令和7年8月6日（火）13:00からWeb会議形式で開催され、電波有効利用委員会の下部組織である価額競争実施方法検討作業班の委員約15名が参加しました。座長は東京大学大学院工学系研究科の中尾彰宏教授が務めています。
検討事項では周波数オークション（価額競争）の制度設計に関する技術的・制度的課題について議論が行われました。特に5G普及に向けた新たな周波数帯の割当方法、既存の比較審査方式との比較検討、国際的な動向を踏まえた制度設計のあり方が主要な論点となりました。
価額競争の基本的枠組みでは、現行の比較審査方式（技術的能力、財務基盤、計画の妥当性等を総合評価）に加えて、経済的価値を反映した価額要素を組み込む混合型の評価方式が検討されています。これにより周波数の経済的価値の可視化と、より効率的な周波数利用を促進することが期待されています。
技術的検討では5G高度化（5G-Advanced）や6G（第6世代移動通信システム）の技術的要件を踏まえ、必要な周波数幅、カバレッジエリア、遅延性能等の要求条件を分析しています。特に28GHz帯、40GHz帯等のミリ波帯域での効率的利用方法と、Sub-6GHz帯（3.7GHz帯、4.5GHz帯等）での追加割当の可能性について詳細な議論が行われました。
国際比較では米国FCC、英国Ofcom、ドイツBNetzA等の先進諸国における周波数オークション制度を分析し、日本の市場環境や規制制度に適した制度設計のあり方を検討しました。特に最低価格の設定方法、支払条件（一括・分割）、既存事業者保護措置等について各国事例を参考に議論しています。
経済的影響分析では価額競争導入により期待される効果として、年間約180-250億円の収入増加、周波数利用効率の向上による経済効果（年間約420-580億円相当）、技術革新促進効果等が試算されています。一方で、事業者の設備投資への影響、サービス料金への転嫁可能性等の懸念事項についても慎重に検討されています。
制度的課題では電波法の改正が必要な事項、既存免許との調整方法、紛争処理手続き、透明性確保措置等について具体的な制度設計を議論しました。特に価額競争導入による既存事業者への影響緩和措置、新規参入促進のためのセットアサイド（一部周波数の新規事業者向け確保）の必要性等について検討が行われています。
スケジュールでは2025年度中に制度設計の基本方針を策定し、2026年度に電波法改正案の国会提出、2027年度から試行的導入、2028年度以降の本格運用を目指すタイムラインが提示されています。
第2回会合の主な検討成果として、価額要素と技術要素の評価配分比率（価額30%、技術70%を軸とした複数案）、最低入札価格の算定方法（周波数の経済的価値、設備投資額、競争環境等を総合的に勘案）、支払方法（10年間の分割払いを基本）等について委員間で一定の方向性が確認されました。
今後の予定では第3回会合（令和7年8月下旬予定）で事業者ヒアリングの実施、第4回会合（令和7年9月上旬予定）で中間とりまとめの策定を行い、パブリックコメントを経て最終的な提言を取りまとめる予定です。
記事は、周波数オークション制度の導入が5G/6G時代の周波数需要増大に対応し、より効率的で透明性の高い周波数割当を実現する重要な政策手段であると位置づけ、技術的合理性と経済的効率性を両立した制度設計を目指すことが重要であると結論づけています。