失業者数の急増
ドイツ連邦雇用庁が8月29日発表した2025年8月の失業者数が300万人を超え、2015年2月以来10年半ぶりの高水準となった。失業率は6.4%に上昇し、前年同月比0.3ポイント、前月比0.1ポイントの増加を記録した。ただし季節調整済みの失業率は前月同様6.3%で、失業者数は前月比9,000人減少しており、夏季休暇による季節要因が主因とされる。
政府の対応策
ベアベル・バース労働・社会相は、世界経済の不確実性とウクライナ戦争の継続が景気減速・労働市場に影響していることを認めつつ、「投資ブースターのような的を絞った投資奨励策や大規模インフラ整備など重要な刺激策で対応し、ドイツの労働者と産業を全面支援する」と表明した。
業種別の雇用格差
製造業の雇用減: 2025年6月時点で前年同月比2.2%減、14万6,000人分の雇用が減少。ドイツの輸出不振や米国・EU間の関税交渉が要因とされる。小売業でも雇用減が継続している。
公共サービスの拡大: 対照的に医療・介護・教育などの公共サービス分野では雇用が大幅拡大している。連邦雇用庁長官のアンドレア・ナーレス氏はこの現象を「労働市場の分断」と評し、産業縮小がドイツ経済全体にネガティブな影響を及ぼす懸念を示した。
専門家の長期的懸念
「フランクフルター・アルゲマイネ」紙は、今回の300万人超えが2015年当時の一時的上昇と異なり、長期的停滞の兆しがあると懸念を表明。政府の社会保障支出拡大と産業の自律回復困難を指摘し、基礎的失業水準が景気循環のたびに上昇する構造的問題を警告した。