日本大学の鶴田大輔氏が執筆した、中小企業のデフォルト後の退出や企業パフォーマンスの決定要因について実証的に分析した研究論文です。
本研究では、日本の企業レベルのデータを用いて、銀行借入をデフォルトした中小企業と非デフォルト企業のパフォーマンスの違いを詳細に分析しています。分析の結果、デフォルト後に銀行借入、ROA(総資産利益率)、および売上高成長率が著しく低下することが明らかになりました。特に重要な発見として、これらの負の影響は企業が存続した場合でも約10年間という長期にわたって継続することが示されており、デフォルトによる制約が企業業績に与える影響の深刻さと持続性を浮き彫りにしています。
企業の存続要因に関する分析では、総資産成長率、ROA、売上高成長率といった実体的な要因に加え、若い経営者の存在や後継者の存在が、デフォルト後の企業存続に正の影響を与えることが判明しました。これは、デフォルト後の企業再生において実体要因が重要な役割を果たすことを示唆しています。一方で、有利子負債利子率や負債比率などの財務指標はデフォルト後の企業存続に負の影響を与えることも確認されました。
金融支援の効果については、銀行からの追加融資や利払い減免がデフォルト後の売上高成長に正の影響を与える一方で、ROAには負の影響を持つという複雑な結果が得られました。これは、銀行からの金融支援がデフォルト企業の存続に与える影響は限定的であることを示唆しており、単なる金融支援だけでは企業の本質的な回復には不十分である可能性を指摘しています。
記事は、中小企業のデフォルト後の再生において、金融支援よりも企業の実体的な強みや経営能力の向上がより重要であることを実証的に示しています。