調査の実施概要と目的 本調査は、令和6年度経済産業省委託事業として、イノベーション創出の担い手として期待されるスタートアップ企業の知的財産戦略の現状と課題を分析し、政策支援の在り方を検討することを目的として実施されました。創業から成長段階における知的財産の活用実態と、国際競争力強化に向けた戦略的取り組みを包括的に調査しています。
スタートアップ企業の知財活用状況 全国のスタートアップ企業3,200社への調査により、特許出願を行っている企業は38.7%となり、前年度比12.4ポイント増加しました。特に深層学習・AI分野では出願率が67.3%と高く、バイオテクノロジー分野でも54.8%の企業が特許戦略を重視しています。一方で、商標登録率は71.2%と高い水準にある一方、意匠登録は23.6%にとどまり、ブランド戦略の重要性認識に課題があることが判明しました。
知財投資と事業成長の関係 知的財産への年間投資額が売上高の5%以上の企業では、平均売上成長率が前年度比47.3%となり、投資額3%未満の企業(18.9%)を大幅に上回りました。資金調達においても、特許ポートフォリオを持つ企業の調達成功率は78.4%となり、非保有企業(42.1%)との差が顕著に現れています。海外展開に成功した企業の89.6%が国際特許出願を実施しており、知財戦略の重要性が確認されています。
課題と政策支援の方向性 スタートアップ企業の知財活動における主な課題として、費用負担(74.2%)、専門人材不足(61.8%)、海外出願手続きの複雑さ(48.3%)が挙げられています。これを受けて、創業初期段階の特許出願支援制度の創設、知財専門人材とのマッチング支援強化、国際出願費用の補助拡充が提言されています。また、大企業とのオープンイノベーション促進に向けた知財ライセンス制度の整備も重要課題として位置づけられています。