日本政策投資銀行が発行する「東海ハンドブック2025年度版」は、東海地域（愛知、岐阜、三重、静岡）の経済・産業・社会情勢を詳細に分析した地域経済報告書です。
東海地域の産業構造と競争力 日本の製造業中心地として、自動車産業（トヨタ自動車を中心とする産業集積）、航空宇宙産業、機械工業、化学工業などの基幹産業の現状と将来展望を包括的に分析。東海地域の製造品出荷額は全国の約15%を占め、特に輸送用機械器具製造業では全国シェア約35%を誇る圧倒的な競争優位性を持っています。
自動車産業の動向と構造転換 世界最大級の自動車産業クラスターとしての東海地域の位置づけ、電動化（EV、HV、PHV、FCV）への対応状況、自動運転技術の開発動向、サプライチェーンの再構築について詳述。カーボンニュートラルに向けた産業転換として、バッテリー技術、水素関連技術の開発・実装が急速に進展しており、2030年代への戦略的対応策が具体的に提示されています。
航空宇宙産業の戦略的発展 三菱重工業、川崎重工業等による航空機産業の集積、宇宙産業の育成、防衛産業の動向について詳細分析。愛知県を中心とした「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」により、部品製造から最終組立まで一貫した産業集積が実現されています。
物流・交通インフラの戦略的活用 中部国際空港（セントレア）、名古屋港（貨物取扱量全国1位）の国際物流拠点としての機能、リニア中央新幹線（2027年開業予定）の整備効果、高速道路網の充実による物流効率化について分析。アジア太平洋地域との貿易拠点としての機能強化と、内陸部への物流ネットワーク拡充による国内物流ハブ機能について詳述されています。
農業・食品産業と観光資源 茶業（静岡茶の全国シェア約40%）、花卉園芸（愛知県出荷額全国1位）、畜産業などの農業現状と6次産業化の推進について報告。伊勢神宮、熱海温泉、富士山（世界文化遺産）などの観光資源、製造業の産業観光を活用した観光振興策についても分析されています。
地域振興と持続可能な発展戦略 Society5.0の実現に向けたデジタル化推進、脱炭素社会実現への取り組み（再生可能エネルギー導入、省エネ技術開発）、地域間格差の是正、人材育成（理工系人材、高度技能者）等、持続可能な地域発展に向けた戦略を具体的数値目標と併せて提示しています。
本ハンドブックは東海地域の投資環境や産業動向を把握する上で不可欠な情報源となっています。