日本政策投資銀行が発行する「北陸ハンドブック2025年度版」は、北陸地域（富山、石川、福井）の経済・産業・社会情勢を総合的に分析した地域経済報告書です。
北陸地域の産業特性と競争力 製造業を中心とした産業構造、特に化学工業、繊維工業、機械工業、電子部品製造業などの集積状況を詳細に分析。富山県のアルミニウム産業、石川県の機械工業、福井県の繊維工業といった県別特色産業の技術力と競争優位性についても定量的に評価されています。農林水産業では日本海側最大級の米作地帯としての優位性、ズワイガニ・ハタハタ・ホタルイカなど日本海固有の水産資源の持続的活用について詳述しています。
北陸新幹線開業効果の詳細分析 2015年の北陸新幹線開業による交通アクセス向上効果、観光入込客数の増加（開業後5年間で約30%増）、企業立地への影響について定量的に分析。2024年の敦賀延伸による更なる効果として、関西圏からのアクセス改善により新たな経済交流創出の可能性についても検討されています。新幹線開業に伴う駅周辺開発の投資効果や雇用創出効果についても具体的数値を用いて評価されています。
伝統産業と先端技術の融合戦略 加賀友禅、輪島塗、越前和紙などの伝統工芸品産業と、AI・IoT・ロボット技術などの最新製造技術との融合による新たな付加価値創造の取り組みを詳細に分析。工芸品のデジタルアーカイブ化、3Dプリンティング技術を活用した新商品開発、海外市場開拓における伝統技術のブランド化戦略について具体事例を用いて解説されています。
エネルギー産業の構造変化 原子力発電所の立地状況と地域経済への影響、再生可能エネルギー（風力、太陽光、小水力）の導入状況、エネルギー政策の動向について詳述。志賀原子力発電所の稼働状況や安全対策、水力発電の豊富な水資源活用による地域エネルギー自給率向上の取り組みについて包括的に報告されています。
観光・文化資源の戦略的活用 世界遺産（白川郷・五箇山の合掌造り集落）、国宝・兼六園、東尋坊などの観光資源、温泉地（和倉温泉、山代温泉等）を活用した観光振興策を分析。日本海の海の幸（寒ブリ、甘エビ、カニ等）、地酒による食文化観光の誘客効果についても定量的に検討され、インバウンド観光の受け入れ体制整備状況も詳細に報告されています。
地域連携と持続可能な発展戦略 北陸3県の連携による広域観光の推進、UIJターンの促進策、人口減少・高齢化対策について詳細に報告。脱炭素社会の実現、デジタル化の推進、Society5.0への対応、地域資源を活かした産業振興など、持続可能な地域発展に向けた戦略が具体的数値目標と併せて提示されています。
本ハンドブックは北陸地域への投資・進出を検討する企業や地域政策関係者にとって重要な基礎資料となっています。