国際的な炭素削減対策において重要な進展があり、シンガポールとタイの間で炭素クレジット協力に関する実施協定が締結されました。この協定は、パリ協定第6条に基づく炭素緩和プロジェクトから創出された炭素クレジット移転の具体的枠組みを確立するもので、国際的な気候変動対策における二国間協力の新たなモデルを提示しています。シンガポールの国際炭素クレジット(ICC)フレームワークの下で、企業は課税対象排出量の最大5%までを調整された炭素クレジットで相殺することが可能となります。
シンガポールの炭素税は段階的に引き上げられており、2024年のCO2換算排出量1トン当たり25シンガポール・ドル(約2,875円)から、2026~2027年に45Sドル、2030年までには50~80Sドルまで上昇する予定です。この税制変更により、企業の脱炭素化への経済的インセンティブが強化され、国際炭素クレジット市場の需要拡大が見込まれます。
特筆すべきは、シンガポールが収益の5%をタイの気候適応策(持続可能な森林管理、洪水対策等)に充当する仕組みを設けていることです。さらに、認証された炭素クレジットの2%を発行時に無効化することで、世界全体の排出量純減少への貢献を確保しています。これにより、単なる排出量の移転ではなく、実質的な地球規模での炭素削減が実現されます。
この協定により、シンガポールはパプアニューギニア、ガーナ、ブータン、ペルー、チリ、ルワンダ、パラグアイに続く8番目の実施協定を締結し、ASEAN域内では初の協定となりました。ベトナムとの実施協定交渉も実質的に妥結しており、シンガポールは国際炭素市場のハブとしての地位を確立しつつあります。
この協定は、ASEAN域内の気候変動対策協力の先例となるとともに、日本企業にとってもシンガポール経由での炭素クレジット調達や、東南アジア地域での脱炭素化プロジェクト参画の機会創出につながる可能性があります。国際炭素市場の拡大と制度整備が進む中、企業の脱炭素戦略における新たな選択肢として注目されます。