政策発表の概要
中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は2025年8月25日、「グリーン・低炭素転換の推進および全国炭素市場の構築強化に関する意見」を発表。全国炭素排出権取引市場と温室効果ガス自主削減取引市場の拡大・整備について、2027年と2030年を期限とする具体的目標を設定した。
2027年・2030年の達成目標
2027年目標:
- 排出権取引市場が工業分野の主要排出産業を全面カバー
- 全国温室効果ガス自主削減取引市場が重点分野を全面的にカバー
2030年目標:
- 排出枠総量規制を基礎とした無償・有償配分組み合わせの排出権取引市場構築
- 透明性が高く幅広い主体参画の国際基準準拠・全国温室効果ガス自主削減取引市場構築
- 排出量削減効果が明確で価格合理性のある炭素価格スキーム形成
5項目の実施枠組み
(1)全国炭素排出権取引市場の構築加速:
- カバー範囲拡大、排出枠管理制度整備
- 排出権取引試験地区の指導・監督管理強化
(2)全国温室効果ガス自主削減取引市場の積極発展:
- 自主削減取引市場構築の加速
- 認証済み自主削減量の活用推進
(3)炭素市場活性化に向けた取り組み:
- 取引商品拡充、金融機関のグリーン金融商品・サービス開発支援
- 排出権取引主体拡大、市場監督・管理強化
(4)炭素市場の能力構築強化:
- 管理・支援体制強化、排出審査・報告管理強化
- 排出量検証の規範厳格化
(5)実施体制の強化:
- 各地域・部門の指導強化
- 政策・法制度支援強化
現行制度からの拡大
中国の全国炭素排出権取引制度(全国ETS)は2021年7月運用開始。当初は発電事業者限定だったが、2025年3月から鉄鋼・セメント・アルミニウム精錬業界に対象拡大済み。今回の意見により、工業分野全体への更なる拡大が明確化された。
国際的影響と意義
世界最大のCO2排出国である中国の炭素市場拡大は、グローバルな気候変動対策に重大な影響を与える。透明性向上と国際基準準拠により、国際炭素市場との連携可能性も高まり、企業の脱炭素戦略に新たな機会と課題をもたらす。