タイにおける人権デューディリジェンス（DD）の取り組みと日系企業への影響について詳細に分析したレポート。欧米を中心とした人権配慮への圧力を受け、企業の社会的責任（CSR）が世界的に重要視される中、タイでも人権尊重の動きが進展している。
【タイ政府の取り組み】 ・2019年にアジア初の「ビジネスと人権に関する国家行動計画（NAP）」を策定 ・2023年に改定版（2023-2027）を公表 ・法務省のナリーラック氏がリーダーシップを発揮 ・EU・FTA交渉やOECD加盟意向表明により国際基準適合を推進 ・2026年には人権DD法制化の方針
【企業の取り組み事例】 チャロン・ポカパン（CP）グループ、タイ・ユニオン・グループ等のグローバル企業が先行。特にタイ・ユニオンは水産業界での人権問題を受け、「シー・チェンジ」戦略で持続可能性を推進し、MSC認証99％達成。
【主要な人権リスク】
- 外国人労働者（310万人の正規、180万人の非正規）：高額な就職あっせん手数料、賃金未払い等
- 結社の自由の制限：外国人労働者は労働組合設立不可
- 土地開発・住民移転：強制立ち退き、生活基盤へのアクセス阻害
- 人権擁護者への報復・スラップ訴訟
- 労働安全衛生：基本的安全対策の不備
【日系企業への提言】 ・欧州規制対応により東南アジアでの人権DD実施が増加 ・沖電気工業やセイコーエプソンによるRBA認証取得等の先進事例 ・「リスクがない」ことではなく、現地の人々のリスクを「自分事」として捉える重要性 ・人権尊重は企業価値向上と人材確保にも有効
日系企業がこれまで「当たり前」に行ってきた取り組みが国際基準の人権DDに資する場合も多く、組織的な対応強化が求められている。