【日米合意文書の概要】 日米両政府は7月に米国の関税措置に関する協議で合意に達し、その後トランプ大統領が9月4日に対日関税を引き下げる大統領令を発令。さらに同日、日本による米国産品の購入拡大や関税措置の方針に関する共同声明、および日本の対米投資の対象分野や選定方法に関する了解覚書を作成した。
【CSIS専門家による分析】 戦略国際問題研究所（CSIS）のクリスティ・ゴベラ日本部長が9月10日に発表した論考で3文書の要点を解説。
大統領令の要点では、相互関税と一般関税の「積み重ね（スタッキング）」がないことを明記し、日本製の自動車・同部品に対する関税の引き下げを明記した。
共同声明の要点では、日本による米国産品の購入に関して金額や分野を明確化し、日本製の医薬品や半導体に対する将来の関税を他国と同等以下にする方針を示した。
了解覚書の要点では、投資の期限や分野を明確化し、米国の「投資委員会」や日米の「協議委員会」を通じた投資対象の選定プロセスを明らかにした。キャッシュフローの分配比率は「みなし配分額」に達するまで米国50%/日本50%、その後米国90%/日本10%となる。
【評価と課題】 肯定的評価として、ゴベラ氏は合意内容の明確化を肯定的に評価し、米国の日本に対する関税率が他国より相対的に低水準になることで、日本製品の競争力が高まると指摘。
潜在的リスクとして、大統領令と覚書に日本が合意を履行しない場合に米国が関税を引き上げ得るとの記載があることや、米国政府が3文書で言及されていない関税措置を導入する可能性などを指摘し「潜在的な落とし穴も残る」とした。
【ハドソン研究所による投資分析】 ハドソン研究所のウィリアム・チョウ日本部副部長が9月5日に報告書を発表。投資プロジェクトの有力候補として米国アラスカ州でのLNG開発プロジェクトを挙げ、「日本企業の対米投資促進に寄与する」「米日両国の深く重層的なパートナーシップをさらに確固たるものにする」と肯定的に評価した。