ジェトロが公表した日本企業のEPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)活用に関する総合分析レポートで、日本が締結している21のEPA・FTA の活用実態と具体的な成功事例について詳細な調査分析を行った重要な貿易政策レポートです。本調査は、全国の輸出企業約3,000社を対象とした大規模アンケート調査と、約200社への詳細インタビュー調査に基づいて作成されています。
EPA・FTA活用率の現状について、日本企業の輸出におけるEPA・FTA活用率は全体で約45.2%となり、前回調査(2022年:41.8%)から3.4ポイント上昇しています。企業規模別では、大企業(従業員1,000人以上)が72.6%と高い活用率を示す一方、中小企業(従業員300人未満)は28.9%に留まっており、企業規模による格差が顕著となっています。業種別では、自動車関連(78.4%)、化学・プラスチック(65.2%)、機械・金属(58.7%)で活用率が高く、繊維・アパレル(32.1%)、食品・農産物(29.8%)で相対的に低い水準となっています。
協定別活用状況では、CPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の活用率が最も高く67.3%、次いで日韓EPA(65.1%)、ASEAN包括的経済連携協定(58.9%)となっています。地域別では、アジア向け輸出でのEPA活用率が高い一方、欧州向けでは日EU・EPA の活用が徐々に拡大している状況です。
活用による関税削減効果について、EPA・FTA を活用した企業の平均関税削減額は年間約380万円(中央値:約150万円)となっています。削減額が最も大きい業種は自動車関連で平均約1,200万円、次いで機械・金属約680万円、化学・プラスチック約520万円となっています。関税削減率では、平均約8.7%の削減効果が実現されており、特に高関税品目では15-20%の大幅な削減効果を享受する企業も見られます。
活用阻害要因として、「手続きの複雑さ」(68.4%)、「原産地規則の理解困難」(54.7%)、「事務処理コストの負担」(47.2%)、「専門人材の不足」(43.8%)が主要な課題として挙げられています。特に中小企業では、「情報不足」(62.3%)、「手続きサポートの不足」(58.1%)が深刻な問題となっており、支援体制の充実が急務とされています。