文化庁が2025年に発表した「地方における文化行政の状況について（令和5年度）」について、全国の地方公共団体における文化政策の実施状況と課題を包括的に分析した調査報告書です。
本調査は全国1,741市区町村を対象とした悉皆調査として実施され、地方文化行政の実態を網羅的に把握した重要な政策基礎資料となっています。調査項目は文化施設の整備・運営状況、文化事業の実施状況、文化財保護の取り組み、文化行政組織の体制、予算配分の状況、人材確保の課題など多岐にわたる詳細調査が実施されています。
文化施設の整備状況では、公立美術館、博物館、図書館、文化ホール、市民会館等の設置状況について人口規模別、地域別の詳細分析が行われており、文化インフラの地域格差と整備課題が明らかになっています。施設の老朽化対応、バリアフリー化、デジタル化対応についても具体的な整備状況と今後の計画が調査されています。
文化事業の実施状況では、自治体が主催する文化イベント、芸術祭、伝統文化継承事業、市民参加型文化活動の開催実績と参加者数、予算規模、事業効果の評価が詳細に分析されています。コロナ禍の影響による事業実施方法の変更、オンライン開催の活用、感染対策の工夫などの新しい取り組みについても調査結果が含まれています。
文化財保護については、指定文化財の保存・活用状況、未指定文化財の調査・保護の取り組み、文化財保存技術の継承、災害対策の実施状況について詳細な実態調査が行われています。特に少子高齢化による伝統文化の継承危機、担い手不足の深刻化、技術継承の課題について具体的な対応策と支援制度の活用状況が分析されています。
文化行政組織については、専門職員の配置状況、文化行政担当部署の体制、他部局との連携状況、外部専門家の活用などの組織運営の実態が調査されています。文化政策の企画・立案能力、事業実施のノウハウ、評価・改善のサイクルなど、行政能力の向上に向けた課題と取り組みが詳細に分析されています。
予算面では、文化関係予算の規模と推移、予算項目別の配分状況、国・県の補助金活用状況、民間資金の導入状況などの財政面の分析が行われています。人口減少と財政制約の中での文化予算確保の困難さ、効率的な予算執行の工夫、成果指標に基づく予算評価の取り組みなどが検証されています。
人材確保の課題では、文化行政専門職員の採用・育成、外部人材の活用、研修機会の確保、専門性向上の取り組みについて詳細な調査が実施されています。文化政策に関する専門知識、企画・調整能力、地域ネットワーク構築能力など、求められる人材像と現状のギャップが分析されています。
地域間連携については、広域連合による文化事業の共同実施、文化施設の相互利用、人材交流、ノウハウ共有などの取り組み状況と効果が評価されています。
記事は、地方創生と文化による地域活性化が重要政策課題となる中で、地方文化行政の現状と課題を客観的に把握し、効果的な文化政策の推進に向けた政策提言の基礎となる重要な調査成果となっています。