調査背景と目的 経済産業省が中小企業のデジタル化推進状況を包括的に分析し、今後の政策立案に向けた基礎データを整備することを目的として実施した大規模実態調査の報告書です。全国の中小企業約15,000社を対象としたアンケート調査と、優良事例企業200社への詳細ヒアリングを通じて、デジタル化の現状と課題を明らかにしています。
デジタル化の進捗状況 調査結果によると、何らかのデジタルツールを導入している中小企業の割合は68.4％に達し、前年度から8.2ポイント上昇しました。特に売上規模10億円以上の中小企業では導入率が85.3％と高水準を示している一方、5億円未満の小規模企業では42.1％に留まっており、規模間格差が明確になっています。導入済み企業における生産性向上効果は平均15.7％で、投資回収期間は2.3年となっています。
導入障壁と課題 デジタル化未導入企業の主な理由として、「初期投資コストの高さ」が73.2％、「専門人材の不足」が65.8％、「効果が不明確」が52.4％を占めています。また、導入済み企業でも「運用人材の確保」に56.9％が課題を感じており、継続的な人材育成支援の必要性が浮き彫りになりました。年間IT投資額は売上高の1.2％が平均的で、先進企業では3.5％に達しています。
政策提言と支援策 報告書では、中小企業のデジタル化加速に向けて、初期導入支援の補助率引き上げ（現行50％から75％）と、専門人材派遣制度の創設を提案しています。具体的には年間予算1,500億円の新たな支援枠組みを設け、5年間で中小企業のデジタル化率を現在の68.4％から90％以上に引き上げることを目標としています。また、地域別デジタル化支援センターの全国47都道府県への設置も提言されています。