スポーツを活かした経済活性化・地方創生の実現に向けて

スポーツ庁が令和7年8月4日に開催した「スポーツを活かした経済活性化・地方創生タスクフォース」において発表された、スポーツによる地域経済活性化と社会課題解決に関する包括的な戦略文書です。

地域・社会の課題とスポーツの可能性

現在の地域・社会が直面する課題として、急速な少子高齢化や人口減少、それに伴う地域の経済停滞や活力の低下、地域の楽しみや交流機会の減少、つながりの希薄化、更なる人口減少が挙げられています。これらの課題に対し、スポーツは重要な解決手段として位置づけられています。

スポーツの可能性・特性として、人々の間に楽しみやつながり、一体感をもたらす力、エンターテイメント性や発信力、ブランド力等の特性、コンテンツ、施設、ファンベース等のリソースが認識されています。これらの特性を活用することで、地域の経済活性化、コミュニティ醸成、健康・ウェルビーイングの増進、余暇・交流機会の創出等の効果が期待されます。

基本戦略：スポーツイノベーションエコシステムの創出

タスクフォースでは、「スポーツの可能性を最大限活用し、地域・社会の活性化や課題解決に貢献」することを目指す姿として設定しています。さらに、スポーツへの投資や関わる人々の増加につながる好循環を生みだし、スポーツ界と地域・社会がともに成長・発展することを基本的な考え方としています。

この実現に向けて、「多様な主体・分野との新結合による、スポーツイノベーションエコシステムの創出」を取組の方向性として掲げています。スポーツがもたらす価値や可能性への認識を広げ、企業・大学・自治体等の多様な主体・他分野との連携・共創を推進することが重要な戦略となっています。

現状の課題と解決方針

現状認識として、経済・社会に貢献できる多様なスポーツの価値・可能性を活かし切れていないこと、企業・地域と連携した取組が持続的でなく、事業として拡大しにくいことが課題として認識されています。

具体的な課題は3つに分類されています。課題1は「スポーツの価値や可能性への認知不足」で、スポーツ関係者や地域・社会のスポーツがもたらす価値への理解や活用のノウハウが不足していること、政策、スポーツへの投資に繋がらないことが挙げられています。

課題2は「スポーツ団体等と企業・地域の限定的な連携」で、スポーツ団体等では、少数で競技運営・経営等を担い、新たな取組む人材・ノウハウが不足していること、社会連携活動は収益化しにくく、継続に注力することが困難な状況が指摘されています。

課題3は「事業の拡大・多角化への体制面の課題」として、地域スポーツコミッション等の地域で活動する主体では、組織体制が脆弱、経営、戦略的な事業展開を担う人材が不足していることが問題となっています。

取組の方向性と具体的施策

取組の方向性として、スポーツを活用した経済・地域の活性化に向けた取組が自律的に展開され、スポーツ界と地域・社会の間に双方向の価値循環を生みだす、持続可能なイノベーションエコシステムを創出することが目標とされています。

具体的には、多様な主体・分野の連携・共創の強化として、連携したプロジェクトや分野内では、スポーツの価値や可能性に関する理解促進、多様なステークホルダーの巻き込み、そして、地域特性を活かした創意工夫ある取組の展開が求められています。

また、中間支援組織（地域SC等）の機能強化や、プロスポーツ、実業団等トップスポーツの投資・パートナーの拡大、スポーツを楽しめる、「する」「させる」環境の拡大が重点的な取組として位置づけられています。

記事は、スポーツが持つ多面的な価値を最大限に活用し、地域経済の活性化と社会課題の解決を同時に実現する持続可能なエコシステムの構築を目指すと結論づけています。