文部科学省が開催した「部活動の地域展開・地域クラブ活動の推進等に関する調査研究協力者会議(第4回)」は、部活動改革の推進と地域クラブ活動への移行に関する政策検討を行った会議の記録です。
会議の背景では、教員の働き方改革と少子化による学校規模縮小により、従来の学校部活動システムの持続可能性が課題となっています。中学校部活動の顧問教員のうち約58.2%が担当競技・分野の経験がなく、指導に困難を感じている教員が約71.3%に上っています。また、休日の部活動指導により教員の週休日が確保できていない現状があります。
制度改革の方向性では、令和5年度から段階的に休日の部活動を地域に移行し、令和7年度末を目途に地域クラブ活動への移行を完了する方針が確認されています。平日の部活動についても将来的な地域移行を検討しており、学校と地域が連携した新たなスポーツ・文化活動の仕組み構築を目指しています。
移行状況の現状では、全国1,741市区町村のうち約412市区町村(23.7%)で休日の地域移行が開始されており、移行済み中学校は全体の約18.4%(約1,820校)となっています。地域別では都市部での移行率が高く、東京都区部で34.2%、政令指定都市で28.7%となる一方、町村部では11.8%にとどまっています。
地域クラブ活動の実施形態では、総合型地域スポーツクラブによる運営(38.5%)、民間事業者への委託(24.7%)、学校開放による継続実施(19.3%)、競技団体・文化団体による運営(17.5%)となっています。費用負担では月額平均約3,200円(従来の部活動費約1,800円から増加)で、経済的負担増への対応が課題となっています。
指導者確保では、地域移行に必要な指導者数が全国で約4.8万人と推計される中、確保済みは約2.1万人(43.8%)にとどまっています。指導者の内訳は退職教員(32.4%)、地域住民・保護者(28.7%)、外部指導員(23.1%)、大学生(15.8%)となっており、質の高い指導者の確保と研修体制整備が重要課題です。
財政支援では、国の「地域運動部活動推進事業」により年間約12億円、「地域文化クラブ活動推進事業」で約4.5億円の予算が配分されています。また、地方交付税措置により自治体の財政負担軽減を図っており、移行初期段階の支援体制を構築しています。
課題と対応策では、地理的格差(中山間地域・離島での実施困難)、経済格差(参加費負担増による参加機会の制約)、指導者不足、競技水準の維持、大会参加機会の確保等が主要課題として挙げられています。これらに対し、ICTを活用した遠隔指導、経済的支援制度の拡充、指導者育成プログラムの充実等の対策を検討しています。
デジタル技術活用では、オンライン指導システムにより地理的制約を克服し、専門指導者との遠隔レッスンを実現しています。また、AI技術による動作解析・技術指導支援、アプリを活用した練習管理・成果測定等、効率的で効果的な指導方法の開発が進んでいます。
保護者・生徒の反応では、アンケート調査により地域移行に対する賛成が約52.3%、反対が約23.1%、どちらでもないが約24.6%となっています。賛成理由は「専門的指導の期待」(68.4%)、「教員負担軽減」(45.7%)で、反対理由は「費用負担増」(71.2%)、「送迎負担」(58.9%)となっています。
国際比較では、ドイツのスポーツクラブシステム、フランスの地域スポーツ協会、韓国の放課後活動等を参考に、日本の文化・社会に適した制度設計を検討しています。特に持続可能な運営体制と質の高い指導体制の両立が重要な論点となっています。
今後の方針では、令和7年度末の地域移行完了に向けて、未実施自治体への支援強化、指導者確保・育成体制の拡充、経済格差是正措置の検討、質保証システムの構築等を重点的に推進します。また、平日の部活動地域移行についても段階的検討を開始する予定です。
成果指標では、移行完了率、生徒・保護者満足度、指導者確保率、競技・文化活動水準の維持・向上等を定期的に測定・評価し、制度改善に活用しています。令和6年度の中間評価では、移行済み地域の約78.5%で「生徒の活動満足度向上」を確認しています。
記事は、部活動の地域移行が教員の働き方改革と生徒のスポーツ・文化活動充実を両立させる重要な制度改革であり、地域の実情に応じた多様で持続可能な仕組みづくりが成功の鍵であると結論づけています。