調査概要と対象 経済産業省が日本の製造業におけるサプライチェーンの現状分析と強靭化施策の効果測定を目的として実施した大規模調査の報告書です。自動車、電子機器、化学等の主要製造業12分野・約3,500社を対象とし、COVID-19やウクライナ情勢等の外的ショックに対するサプライチェーンの脆弱性と対応策を詳細に分析しています。
リスク認識と被害状況 調査対象企業の87.3%が「サプライチェーンリスクが経営に重大な影響を与える」と回答し、リスク認識の高まりが明確になりました。2022-2024年の期間中に供給途絶を経験した企業は64.2%に達し、平均的な影響期間は3.7ヶ月、売上への影響額は平均15.8億円となっています。特に半導体不足の影響は深刻で、自動車業界では生産計画の38.5%削減を余儀なくされた企業が全体の72.1%を占めました。
強靭化への取り組み状況 サプライチェーン強靭化に向けた投資を実施した企業は78.9%で、年間投資額は売上高の2.4%が平均値となっています。具体的な取り組みとして、「調達先の多角化」が85.2%、「在庫水準の見直し」が71.8%、「国内回帰・近隣国シフト」が45.3%となっています。デジタル技術を活用したサプライチェーン可視化システムの導入企業は42.7%で、導入済み企業では供給途絶リスクが平均35.4%低減されています。
政策提言と支援制度 報告書では、サプライチェーン強靭化支援として年間3,000億円規模の新たな補助制度創設を提案しています。重要物資の国内生産基盤強化に1,500億円、東南アジア等への生産拠点分散支援に1,000億円、デジタル化・可視化システム導入支援に500億円の配分を想定しています。また、特定国依存度の高い重要物資(半導体材料、レアアース等)について、依存度を現在の70%以上から50%以下に低減する数値目標を設定し、5年間での達成を目指すとしています。