社会福祉施設職員等退職手当共済制度の持続可能性を検討
概要
第3回検討会では、事業者団体による加入状況・人材確保効果・掛金負担の調査、公的年金の財政検証を参考にした制度安定化策、掛金と給付、公費助成、積立金、加入対象の見直しが議論された。給付水準を維持しつつ、定期的な財政検証、掛金の予見可能性、積立金や自動調整の可能性を検討する必要性が示された。
要点
- 退職手当共済制度は、福祉人材の確保・定着と長期勤続を支える役割を担っている。
- 制度の安定には、掛金引上げの見通し、定期的な財政検証、公費助成の在り方が重要となる。
- 障害福祉関係法人の97.1%、児童養護・乳児院・母子生活支援施設の94%が制度に加入していた。
- 第二種社会福祉事業や制度対象外職員への公費助成・加入範囲の拡大が論点となった。
概要
令和8年6月26日の第3回検討会では、関係団体のヒアリングと、公的年金における賦課方式・積立金・財政検証の仕組みの説明が行われた。制度は社会福祉施設の職員を対象とする退職手当制度で、現行は賦課方式を採用している。
日本知的障害者福祉協会の調査では、378法人の回答から、制度加入が職員の確保・定着に寄与するとした法人が76.3%に上った。全国児童養護施設協議会などの調査でも、加入制度の説明や採用時のアピールが人材確保・定着に活用されていた。
一方、障害福祉事業所では平成28年4月1日以降の公費助成廃止後に入職した職員を加入させていない制度対象外施設が、加入法人の4分の1を占めた。新規加入者の減少が、賦課方式の制度を不安定化させる要因として示された。
主要数値
- 検討会開催日
- 令和8年6月26日
- 障害福祉関係法人の制度加入率
- 97.1%
- 児童養護・乳児院・母子生活支援施設の制度加入率
- 94%
- 現行の本制度掛金年額
- 14万8500円
- 保育等で公費助成がある場合の掛金年額
- 4万9500円
- 加入5年未満の支給額割合
- 総支給額約1400億円のうち83億円、5.9%
- 公的年金の保険料率
- 賃金の18.3%
- 財政検証の見通し期間
- 今後100年間
影響
制度加入は採用時の魅力や職員の将来への安心感に結び付き、社会福祉施設の人材確保・定着を支える。児童養護の現場では、職員の長期勤続が子どもとの安定した関係形成や支援の質にも関係する。
掛金がさらに上がれば、約9割の法人が経営への影響を見込み、経営・運営の圧迫、離職率上昇、他業種への人材流出が懸念される。措置費で運営する施設では、増額分を独自に確保しにくい。
給付水準を下げずに制度を維持する意見が多数を占める一方、支給要件や公費負担を見直す場合には、職員の処遇と法人経営への影響を同時に検証する必要がある。
詳細
事業者団体からは、掛金の大幅引上げを前提にせず、年複数回の分割納入を可能にすること、給付水準を可能な限り維持すること、制度の魅力を発信すること、一定期間の集中的な公費投入を行うことが提案された。支給要件の勤続1年以上については、3年から5年程度への見直し効果を検証する案も示された。
児童養護施設側は、第二種社会福祉事業のうち公費助成対象外の事業にも対象を広げるよう求めた。対象外事業へベテラン職員を配置すると、対象外となる掛金を施設側が全額負担して対応する場合があり、高機能化・多機能化の進展を妨げる可能性がある。
公的年金の例として、5年ごとの財政検証で人口・経済・就業の複数ケースを投影し、制度変更を検討する方法が紹介された。共済制度でも定期的な検証を制度化し、掛金の引上げ時期を早期に示すこと、長期的には賃金と掛金を連動させる自動調整を検討することが提案された。
積立金を形成する場合は、一定期間に収支差額を黒字にする必要があり、規模・運用方法・合意形成が論点になる。現行制度では、非加入届を取り下げれば全職員の再加入が可能だが、空白期間は加入期間に算入されない。制度の掛金は事業主が全額負担し、加入期間が長いほど支給乗率が高くなる。