令和8年度年次経済財政報告―成長型経済への本格的移行に向けた課題―第3章 物価環境の変化と成長資本の蓄積 — 第3節 賃金と物価の緩やかな上昇と設備投資の拡大
概要
内閣府調査は、市場規模や経済成長への期待が高い企業ほど設備投資に前向きで、緩やかな物価上昇予想や価格転嫁の進展も投資意欲を高める傾向を示した。一方、先行き不安、予算不足、人手不足が投資を抑制している。企業の資本蓄積と賃上げを進めるには、予見可能性を高め、価格転嫁しやすい経済環境を維持することが重要とされる。
要点
- 成長期待が設備投資を押し上げる
- 緩やかな物価上昇予想も投資に寄与する
- 維持更新、省力化、AI・デジタル投資に前向きな企業が多い
- 先行き不安と人手不足が投資の制約となる
概要
内閣府の「生産性向上に向けた取組に関する企業動向調査」を用い、企業の経済認識と設備投資の関係を分析した。
市場規模や日本経済の実質成長率を高く予想する企業ほど、1年後・5年後の設備投資計画を増やす傾向が統計的に確認された。緩やかな物価上昇を見込む企業でも投資意欲が高く、過度に低い物価上昇や高すぎる上昇予想では抑制される山型の関係が示された。
主要数値
- 調査票回収期間
- 2026年2月27日~3月13日
- 人手不足等で稼働できない設備が「大いにある」企業
- 6.0%
- 人手不足等で稼働できない設備が「少しある」企業
- 28.7%
影響
成長期待、価格転嫁のしやすさ、安定した緩やかな物価上昇を保つことは、企業の設備投資だけでなく賃上げにもつながり、資本ストックの蓄積と中長期的な経済成長を後押しし得る。
投資促進策は、製造業・非製造業や大・中堅企業・中小企業の違い、人手不足などの事情を踏まえて設計する必要がある。
詳細
企業の投資意欲は維持更新が最も強く、省力化、AI・デジタル・ソフトウェア、能力増強が続いた。省力化ではWEB・IT関連ソフトやシステムの導入増加が目立ち、製造業では生産自動化も進んだ。一方、SDGs関連投資は相対的に低調だった。
価格転嫁がしやすくなったと感じる企業ほど設備投資に前向きだった。原材料・エネルギーでは「多少転嫁しやすくなった」が45.5%、人件費では37.7%だった。人件費は原材料等より転嫁しにくい傾向が残る。
投資をためらう主因は予算不足、先行き不安、事業拡大の見込み不足、人材不足である。小規模企業のクラウド会計データでは、資本金1,000万円未満の17,183社を対象に2021年から2024年の費用等を確認し、人件費の伸びが売上高の伸びを下回った。