第4章 心地よい生活空間の創生
概要
令和8年3月、令和8年度から17年度を計画期間とする新たな住生活基本計画(全国計画)が閣議決定された。人口・世帯の減少や単身世帯の増加、相続住宅の大量発生などを見据え、「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の視点で11の目標を定め、今後10年間の施策の方向性を示す。老朽化マンションの管理・再生を円滑にする法改正、住宅金融や税制、住生活リテラシーの向上も進める。さらに、都市公園、人中心の道路、自転車活用、総合交通戦略、鉄道・バス・タクシーの利便性向上などを通じ、生活環境と交通の改善に取り組む。
要点
- 住生活基本計画は3つの視点から11目標を掲げ、当面10年間の施策の方向性を示す。
- 改正マンション関係法は、マンションの管理・再生の円滑化等を図る。
- 令和6年度末の都市公園等は115,917か所、約131,243haで、1人当たり面積は約11.0m²。
- 都市・地域総合交通戦略は令和8年3月現在、129都市で策定または策定中。
概要
住生活基本計画は、住宅政策の基礎となる将来の人口・世帯数等の推計を踏まえて策定された。令和32年には人口・世帯数の減少、単身世帯の増加、既成住宅地等での相続住宅の大量発生、生産年齢人口の減少が見込まれる。こうした変化と将来の住生活を、「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の3つの視点に整理し、11の目標を設けている。
本章は「心地よい生活空間の創生」を掲げ、住生活の安定と向上、快適な生活環境、自転車の活用、利便性の高い交通の実現を扱う。住宅施策に加え、緑豊かな都市環境、人優先の道路づくり、交通手段間の連携や公共交通の利用環境改善を取り上げている。
影響
改正マンション関係法の施行により、マンションの良好な居住環境の確保と、老朽化マンションの損壊等から国民の生命・財産を保護することが図られる。
広島電鉄の駅前大橋ルートの開業により、広島駅と中心市街地との間のアクセス利便性が向上した。
詳細
令和7年5月成立の改正マンション関係法(令和7年法律第47号)は、新築から再生までのライフサイクルを見通して管理・再生を円滑化する。管理計画に基づく新築時からの適正管理、建物・敷地の一括売却や建物更新等を多数決決議で可能にする再生措置、相談や合意形成を支援する民間団体の登録制度を設けた。令和8年4月の施行に向け、標準管理規約・基本方針の改正、自治体向けガイドライン整備、全47都道府県での説明会等を行った。
住宅金融支援機構は【フラット35】の証券化支援を通じ、耐久性等の技術基準と物件検査により住宅の質を確保する。耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性、耐久性・可変性のいずれかが一定基準を満たす住宅や、子どもの人数等に応じて金利を引き下げる商品を実施する。また、高齢者向けにリバースモーゲージ型住宅ローン【リ・バース60】の供給を支援する。令和8年度税制改正では住宅ローン控除の適用期限を5年間延長し、省エネ性能等の高い既存住宅の借入限度額・控除期間を拡充、40㎡台の既存住宅を新たに対象とする。令和10年以降は一定のハザードエリア内の新築住宅を対象外とする立地要件を加えるほか、期限を迎える特例措置の延長や一部要件の見直しを行う。
官民連携の「住生活リテラシー・プラットフォーム」の取組として、住まいの判断力を高める情報を提供するウェブサイト「いま身につけよう住まいの判断力 住まリテ」を令和7年に公開した。
道路施策では、幹線道路の安全性を高めつつ自動車交通を生活道路から転換し、生活道路では速度抑制や通過交通の進入抑制を図る。自転車と歩行者の事故増加や電動キックボード等の普及を踏まえ、通行空間整備と交通ルールの啓発を進める。ほこみち制度などによる賑わい空間づくり、地図標識の設置、自治体や道路協力団体等による柔軟な道路管理も実施する。
自転車活用施策は、歩行者・自転車・自動車を分離した通行空間や駐輪場の整備、シェアサイクル導入、地域公共交通との連携を進める。事業者等の自転車通勤を促し、積極的な事業者を認定する。観光ではサイクリング環境やナショナルサイクルルートを整え、サイクルトレイン・サイクルバスを促進する。警察と通行ルールを周知し、保険加入を義務付ける条例の制定を促進するほか、災害時の移動・輸送にも自転車を活用する。
地方公共団体は関係者による協議会を設け、都市・地域の将来像や交通サービス、必要な交通・まちづくり施策、実施プログラムを含む総合交通戦略を策定する。国は戦略に基づくLRT等の整備を支援する。公共交通の利用環境改善ではLRT、BRT、キャッシュレス決済の導入を支援し、都市モノレール等の延伸や路面電車のバリアフリー化も進める。
東京圏では東京メトロ有楽町線(豊洲~住吉)と南北線(品川~白金高輪)の延伸を進める。多摩都市モノレール(上北台駅~(仮称)No.7駅(箱根ケ崎駅付近))は令和7年5月、新空港線(東急蒲田駅~蒲田新駅(仮称))は同年10月に事業化された。大阪圏ではなにわ筋線の整備を進める。人口減少下のバス・タクシー利用を促すため、位置情報、キャッシュレス決済、電気自動車、ノンステップバスやユニバーサルデザインタクシー等を導入し、混雑回避、輸送力の大きな車両、急行バス、地方空港・駅の利用環境改善も支援する。