経済産業省による「令和6年度消費者相談報告書」について、2024年度の消費者被害実態と相談対応の総合的分析を行った年次報告書です。
消費者相談の全体動向
令和6年度の消費者相談件数は前年度比7.8%増の約156万件となり、デジタル化の進展に伴う新型詐欺や偽サイト被害の急増が顕著に表れています。相談者の年代別では、60歳以上の高齢者が全体の42.1%を占める一方で、20代以下の若年者相談も前年比15.2%増加し、世代を問わず消費者被害が拡大している状況が明らかになっています。
デジタル関連消費者トラブルの深刻化
インターネット通販関連の相談が全体の31.4%(約49万件)を占め、うち偽サイトによる被害が23.7%増加し約12万件に達しています。定期購入トラブルは前年比8.9%増の約8.5万件で、化粧品・健康食品の初回格安商法による被害が継続して多発しています。SNS関連トラブルでは、インフルエンサーマーケティングの不適切表示による被害相談が新たに年間約1.8万件発生し、若年者の被害拡大要因となっています。
金融・投資関連被害の増加傾向
暗号資産関連の投資詐欺相談は前年比32.1%増の約2.4万件となり、被害額の平均は1件あたり167万円と高額化が進んでいます。外国為替証拠金取引(FX)関連では、自動売買ソフトの販売を装った詐欺が急増し、年間約6,800件の相談が寄せられています。高齢者を狙った社債・ファンド投資詐欺も依然として多発しており、被害総額は推計約43億円に達しています。
悪質商法の新たな手口と対策
訪問販売では、太陽光発電システムの点検商法や住宅リフォーム詐欺が増加傾向にあり、特に一人暮らし高齢者を標的とした被害が深刻化しています。電話勧誘販売では、光回線サービスの契約変更を装った詐欺的勧誘が年間約4.2万件報告され、高齢者の通信費負担増加の要因となっています。
相談処理体制の強化と効果
全国188番(消費者ホットライン)の認知度向上により、相談アクセスの利便性が改善し、早期解決事例が前年比11.3%増加しています。AI活用による相談内容の自動分類システムの導入により、処理効率が約25%向上し、専門性の高い相談への対応時間確保が実現しています。事業者との交渉支援機能の充実により、被害回復率は前年の56.2%から62.8%へと改善しています。
政策対応と今後の課題
デジタルプラットフォーム事業者との連携強化により、偽サイトの早期発見・除去システムが構築され、被害拡大防止効果が確認されています。消費者教育の推進では、学校教育現場での出前講座実施回数が前年比28.4%増の約2,850回となり、若年者の被害予防意識向上に寄与しています。
記事は、消費者被害の多様化・複雑化に対応した総合的な対策の必要性を示し、デジタル社会における消費者保護行政の更なる充実強化に向けた政策課題を明確化する重要な基礎資料として位置づけられています。